08
夏休みも明けた二学期、俺ら高三は学園祭も自主参加になるため特に準備もなく、学年全体が受験モードへと移行してきた。
運動部はまだ引退まで時間があるので然程ピリピリはしていないが、指定校推薦を狙っているやつらは気が張っているように思える。
「岩泉くんは一般だっけ?」
「おう、名字は国公立か?」
「そだよ〜。合格発表が卒業式の後だからわざわざ学校来ないとなんだよね〜」
「県外に行くんだよな…?」
「うん、そのつもり。岩泉くんは?」
「先生には一個上のとこ狙ってみたらどうかって言われた。もしそこ受かれば県外だな」
「夢が広がるねえ!」
「お前のおかげだけどな」
「えへへ」
なんとなくそうだとは思っていたけれど、やはり名字は県外の大学を受けるのか。
そうなると及川の言っていた通り一緒にいられる時間はあと少し。
どのタイミングで言ってもいいのだろうけれど、10月に迫る春高の予選まではバレーに集中したい。
しかし、告白をしなければ名字とのこの微妙な距離感はずっと縮まらない。
「ままならねえな」
「お?岩泉くんがそんなこと言うなんて珍しいね」
明日は雨かな、と笑う名字に待たせることへの罪悪感が少しだけ募る。
「勉強、いつでも一緒にできるから頼ってくれていいんだよ?」
「それは今度マジで頼むわ」
「任せて任せて〜!」
名字は何にも考えていないような返事をしたけれど、俺がお前と少しでも一緒に過ごしたいから頼んでいると知ったらどんな顔をするんだろうか。
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