02
両親への挨拶も済んで、北さんたちにもお祝いされて後は婚姻届を提出するだけのはずやった。
大概揉めると聞く結婚式場の打ち合わせも順調やったし、何も問題なんてなかった。
ただ一つ、名前ちゃんがここ最近浮かない顔をしているのを除いては。
北さんたちとのお祝いくらいからだろうか。
俺と話していてもどこか心ここに在らずといった感じになったのは。
それでもマリッジブルーという言葉はよく聞くし、結婚さえしてしまえばそんな不安も吹き飛ばすくらい幸せにしてあげられると能天気に構えていた。
そして今日、家に帰ったらリビングに置かれていた書き置きに、心臓が止まるかと思った。
『ごめんなさい、気持ちに整理をつけてきます。探さないでください』
一体、どんな気持ちに整理をつけてくるというんやろうか。
好きな人でもおった?
ほんまは結婚したくなかったとか?
浮かんだ言葉を聞こうにも、いなくなった名前ちゃんに連絡を取れる手段はテーブルに置き去りにされたスマホ以外なくて、俺は膝から崩れ落ちるしかなかった。
お店のお客さんだった名前ちゃんと共通の友人はいないし、向こうのご両親の連絡先も知らない。
挨拶に行ったから実家は知っているけれど、まさか婚姻届提出の一週間前に娘さんが行方不明になりましたなんて誰が言えるのだろうか。
back