04

乗った新幹線は、終点の東京駅へ3時間程で到着した。

ここでおしまいにしてもよかったけれど、今はただ空気の綺麗なところに行きたくてそこからさらに新幹線を乗り継いで人生初の東北地方へと足を伸ばした。

兵庫では秋の終わりだった空気もこちらでは冬の足音が聞こえ始めていて、新幹線を降りた途端凍てつくような冷たさに思わず顔を顰める。

「さぶっ…」

少し大袈裟かと思ったけれど、厚着をしてきて正解だった。

新幹線に乗る前に漫喫から予約したレンタカーを借り、目的の宿まで行くと女将さんと思われる人が笑顔で出迎えてくれて、それだけで固まりきっていた心がホッと緩むのを感じた。

「遠くからお疲れ様です。運転大変だったでしょう?」

「久々の運転だったんで緊張しました」

どれくらい振りに笑っただろう。

自然と溢れる笑顔に、今までどれだけ自分が追い詰められていたか実感した。

今日は温泉に浸かってゆっくり休んで、明日はのんびり観光でもしよう。

夕飯、何が出るかな。
旅館なんていつぶりだろう。

治さんは連休がとれなかったので一緒に行くことなんてなかったから、付き合う前に友人と行ったのが最後かもしれない。

その時は何処にいったんだっけ。

案内された部屋で一人横たわりぼんやりと思い出そうとしたけれど、長距離の移動と慣れない運転に疲れた身体は最早限界で、襲いくる睡魔に勝てず重くなる瞼に、おやすみなさいと心の中で呟いた。



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