06

お腹もいい感じに膨れてきたので名前ちゃんに甘いものを食べないかと提案をすると「デザートは別腹だよね!どれ食べようか?」と聞かれ、“女子受けするスイーツ”を頭に浮かべ「気になっとんのはシュークリームとジェラートかな〜」と提案する。

「名前ちゃんはどれが気になる?」と尋ねると悩みに悩んだのち困った顔をして「全部食べたい…」と言うので「ほな全部食べよか!」と返す。
選びきれません!って顔があまりにかわいくてこれは他の男に見せたくないやつやんな?とちょっと俺の影に隠した。

スイーツも食べ終えて、さて時間は午後3時。
食べ歩きという意味ではこれで終わりやけど、折角漕ぎつけたデートやからまだ一緒におりたい。

まだ時間は大丈夫が聞き、この沿線にある水族館へと誘う。
名前ちゃんは少し考える素振りを見せたが、了承してくれたので移動することにした。

水族館とかめっちゃデートっぽいな?
これはもしかするともしかするとやんな?

頭の中は如何に接近するかしか考えとらんけど、悟られたら絶対引かれるから細心の注意を払った。
名前ちゃんから見た俺は“スマートな治くん”であってほしいねん。

水族館へ着くとすぐイルカショーの時間になったので、他の展示は後回しにしてまずイルカプールへと向かう。

ほんまは前方の席で観たかったけど生憎空席がなくて後方になった。
周りはカップルだらけで名前ちゃんも意識してくれたらええなあと横目でチラリと見ると少し顔を赤くしてた。
これはええ感じやな。

名前ちゃんが心ここに在らずな状態なのでわざと大きな声で「イルカめっちゃ飛ぶやん!」と叫ぶと、ハッとした顔でイルカショーの方へ意識を向けた。
よしよし、折角きたんやから楽しまんとな。

イルカショーが終わった後「次来る時は前の方でみような!」とさりげなく誘えば笑って頷いてくれたのでイルカさんありがとおと心の中でお礼を言った。

イルカショーを終えて先程見られなかった館内を回ると、いい感じの照明がついていて雰囲気はバッチリやった。

これは手を繋いでもおかしくあらへんよな?とそーっと指を近づけたら、名前ちゃんもそう思ってくれたのかお互いの指が触れ合った。

思わず変な声が出そうになったけど、折角繋いだ手を離されても嫌やったから一生懸命堪えて、触れた指先をさりげなく恋人繋ぎへとなおしたらぎゅっと握り返してくれて、心臓のバクバクが止まらへんかった。

そのあとはお土産屋さんまでずっと手を繋いで回って、夢の中にいるみたいやった。
幸せってこれのことやんな…?

お土産屋さんでは名前ちゃんとなんかお揃いで買えたらええなと思ったけど、これといったものがなくて困った。

「ぬいぐるみかわええな!?」と言って名前ちゃんの反応を見るも、思ってたのと全然違くてこれはアカンなと戻した。
なんで俺が買うと思ったんや…買わへんわ…。

無難な物の方がええんやろかとフラフラ見とったらチンアナゴのふりかけがあったのでそれにした。
さっきチンアナゴのとこではしゃいどったし、多分喜んでくれるはず。

会計も終えて外へ出るとあたりは暗くて、もう解散やろうなあと少ししょげる。
名前ちゃんの方を見れば、街頭の光でキラキラしとって目が離せなくなった。

それに気づいたのか名前ちゃんも俺の方を見てくれた。
お互い視線が離せなくて、どちらからともなく目を閉じ引かれ合うように唇を近づけ、そっと触れるだけのキスをした。

「好きや」

自然と溢れた言葉に名前ちゃんは頷いてくれて、もう一回目を閉じてくれた。

今度は感触を確かめ合うように、俺たちはゆっくりと二度目のキスをした。



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