治と焼き芋

「え、宮くん何食べとんの」

特に仲が良いわけでもないけれど声をかけてしまったのは、昼休みのこの時間に絶対に手に入らないであろう焼き芋を宮くんが頬張っていたのを見て思わずといった感じだった。

そんな私を一瞥して、見てわからんのかと言わんばかりにため息をつき「焼き芋」と言われたけれど、別に食べているのがなにかを聞いたわけでは決してない。

「さっき南門のとこいたら石焼き芋のおっちゃんの声が聞こえたから買うたん」

うちの学校は帰りのHRが終わるまでは外に出てはいけない規則で、しかも南門は車が通るような通りには面していないし柵の高さもそれなりにあったはず。
どうやって買ったというのか。

「俺くらいの身長あればあんなん簡単に乗り越えられるわ」

私の顔を見ながらドヤ顔で言ってくる宮くんには「ようバレなかったな」とため息混じりに呆れるしかなかった。

「ほら」

宮くんは新聞紙の袋の中から新しいお芋を取り出し、半分に割って私の方に差し出した。

「ええの?」

「美味いもんは一人より二人で食った方がええやろ?」

「宮くんて食べ物人に分けたりするんやね」

「俺のことなんだと思っとるんや…」

ありがたく頂戴したお芋は、甘くねっとりとしていて少し肌寒くなった今の時期に丁度いい温かさだった。

「ん、美味し…」

思わず漏れた感想に「せやろせやろ〜」と満足げに笑う宮くんは、思っていたよりもずっと幼くて親近感が湧く。

バレー部の人たちといる時はどこか遠い人のように感じていたけれど、案外そうでもないのかもしれない。

「これで名字さんも共犯やで」

「嵌められたわ〜」

「美味そうに食っとるやつが言う台詞とちゃうな」

「なあ、私もお金半分出すからもう少しくれへん?」

「嫌や!これは俺のや!」

「ケチ!!ええやん別に!!」

「アカン!!」

「二人で食べた方が美味しいんちゃうの!?」

「それはそれこれはこれや!」

「ケ!!チ!!」

私のしつこさに折れてもう半分をくれた宮くんに、いつか部活終わりにでも焼き芋を差し入れてあげようと思った。
まあ、いつになるかはわからないけれど。

「また買うたら教えてね」

「自分結構図々しいな?」



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