09

ボールの落ちる音が体育館に響き、俺らの試合は終わりを告げた。

悔しくて、悔しくて仕方なかった。

何がエースだ。

でもどんなに悔いてももう俺たちのバレーは戻ってこないし、目前に迫った受験へと頭を切り替えないとそちらの方まで失敗したら笑えない。

試合前に『頑張ってね』と送ってくれた名字には『負けた』と一言だけ返し、その日はそのまま布団へと潜った。

翌週、高校3年間で初めて朝練のない日を迎え、久々に始業ギリギリの時間で教室へ着くと、俺らとの待ち合わせもなかったのに名字はもう自席へと着いていて「岩泉くんおはよ〜」といつもと変わらない少し間延びした口調で俺に挨拶をしてきた。

「…はよ」

あれから名字の返事は特になくて、会えば何か言ってくるかと思っていた俺としては拍子抜けだった。

結局、名字は慰めの言葉はおろか試合のことも口にしないまま放課後になり、帰る準備もせずに教室にいる俺を見て名字はやあやあと声をかけてきた。

「岩泉くん、勉強してく?」

「おう」

「一緒してもいい?」

「頼むわ」

名字から言われなくても俺から頼むつもりだったので、声をかけてくれたのはありがたかった。

放課後、珍しく教室には誰もいなくて、二人の文字を書く音だけが響く。

「…なあ、名字」

「ん?わかんないとこあった?」

目の前のノートから顔をあげ、俺の方へと身を乗り出した名字に、大きく息を吸い告げた。

「俺、お前のこと好きだわ」

一瞬、何を言われたのか理解できないような顔をした後、窓の外の夕陽にも負けないくらい赤くなった名字の顔を見て、もう一度ゆっくりと言葉を紡いだ。

「名字のことが好きだ」

ぽかんとした表情に、思わずふっと笑みが溢れる。

「間抜け面だな。返事は?」

小さいけれど、確かに聞こえた「私も岩泉くんが好き」という言葉にホッと胸を撫で下ろす。

振られるとは思ってなかったけれど、存外俺も緊張していたらしい。

名字の頬に手を当て、お互いの唇をそっと合わせると、名字の目から一筋の涙が頬を伝った。

「…嫌だったか?」

「ううん、違うの。嬉しくて…」

頭を左右に振りポロポロと涙を零す名字は、いつもよりもずっと綺麗に見えた。



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