02
月曜、初めて行く図書館棟は校舎の北側に位置していて、普段行くことのない少し奥まったところにあった。
中に入ると、グラウンドから離れているせいか運動部の声はほぼ届かず、吹奏楽部の奏でる音は丁度いいBGMになり、学内にいるとは思えない心地よい空間が広がっていた。
放課後は部活をやっている人が多いのもあってか、広い図書館の中には数人の生徒がいるだけだ。
いつも通っている図書館は県内一の人気を誇るため人が多く、いくら静かな空間といえど人の気配がそこかしこにあり、時たまする人の話し声に集中が途切れることもしばしばあった。
蔵書数は勿論遠く及ばないけれど、読み物に集中するにはこちらの方がいいかもしれない。
何冊か読みたい本をピックアップし、目立たない席へと腰をかけ本を読もうとした時だった。
ウィーンと自動ドアの開く音がして、背の高い男が入ってきた。
制服を着ているから間違いなく生徒なのだけれど、顔立ちが大人びているせいかうちの制服がひどく似合わない。
上履きの色を見るに、先輩。
じろじろと人を見るのは失礼だとはわかってはいるが、その人の纏う空気が図書館に非常にマッチしていて目が離せない。
向こうも私が見ているのに気がついたのか視線が絡み、時間にしては数秒…体感では数分ほど、お互い見つめ合った。
少しすると彼がふわりと笑い軽く会釈をされ、何事もなかったかのように視線を逸らされた。
その笑った時の優しそうな表情に、胸を撃ち抜かれたような衝撃を覚えた。
そう、つまりは一目惚れ。
そのあと手に取った本に目を通すも、言葉が頭に入っていかなくてただ文字を目で追うだけになってまい、結局本は借りることにした。
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