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「サム〜、暇やねん…なんかやることあらへんの」

「こっちはランチの準備で忙しいんや。ツムのことなんか構ってる暇あらへんわ」

久しぶりの休日、特にやることもなくて朝からサムの店に行ったら邪魔だと言わんばかりにしっしと手を振られた。

「あー、せや。今日近所にパティスリーが新しく開くみたいやからケーキ6つくらい買うてきてや」

はい、と渡されたのは5千円札一枚で、ケーキを買ってこいとは言うものの体のいい厄介払いなのは目に見えている。

「なんでや!開店までまだ時間あるやろ!」

「そこのパティシエールさんが有名らしくてな、今日は初日やし並ばないと買えへんのや」

「なんで俺が!」

「暇なんやろ?買えへんと思っとったからラッキーやわ。早よ行って並んできてや」

有無を言わさぬ笑顔に、仕方なく腰をあげると待てと言わんばかりにサムに腕を掴まれた。

「そのまんまやと目立つからこれ被っていきーや」

渡されたのはおにぎり宮の帽子で、いつもと同じプライベート用の薄い色のサングラスと一緒に被れば少しデカい一般人に見えないこともない。

「リクエストは?」

「ショートケーキは絶対やな!あとはツムに任せるわ。買うてきたら裏口から入って奥の冷蔵庫に入れといてや」

「6つも食うん?」

「午後に北さんが来るから…あ、箱分けてもらってな」

「はいはい、注文の多いヤツやな。ほな、いってくるわ」

ガラリと店の扉を開け、まだ夏の暑さが残る外へと足を踏み出して件の店へと足を運んだ。



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