07

「まっつーん!」

中間試験試験も明日に迫り、周りも真剣に勉強に取り組んでいる中、及川のやけに明るい俺を呼ぶ声が廊下に響く。

試験前なのに機嫌の良さそうな及川なんて嫌な予感しかしないと聞こえなかったフリをすれば、より大きな声で名前を叫ばれた。

「ちょ、まっつん!シカトしないで!!」

「及川うるさいよ。…で、何企んでんの?」

「企みだなんてヒドい言い方しないでよ!まっつんが気になってる女の子、俺の知り合いなんだよね〜」

ああ、やっぱり碌なもんじゃなかった。

ニヤニヤと嫌な笑い方をする及川に、なんて誤魔化そうかと考えを巡らせてはみるが、この間図書館で勉強した時の及川の表情を思い出し、誤魔化すのは不可能に近いことを瞬時に悟った。

「この間、話してるの見てたから知ってるけど?」

「あれ、認めるの?」

「まぁ、気になってるのは事実だしね」

「ふーん…」

「今日も勉強するんでしょ?早く図書館行かないと席なくなると思うけど」

「あ、それなんだけどさ、今日は岩ちゃんと市の図書館の方に行こうと思ってるんだ。だからまっつんは学校の方に行ってね!席は取ってあるから!」

「花巻は?」

「マッキーは今日用事あるから無理なんだって」

全員無理なら俺がわざわざ図書館に行く必要もないのだけれど、先ほどの流れから察すると行かなければいけない理由があるらしい。

「お礼は今度なんか奢ってくれればいいからね!」

及川のこの言い方からしてどうやら俺の予想は当たっているみたいだが、彼女の方は果たして理解しているんだろうか。

遠ざかっていく及川に、機会を作ってくれたありがたさ半分、余計なことをするなという思い半分。

ため息を吐きながらおそらく彼女がいるであろう図書館へと足を向けた。



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