07

水族館から帰ったあと「今日は付き合うてくれてありがとうな」と送ったら「こちらこそありがとうございました」なんて返ってきて、正直浮かれとった。

でもその後なんて送ればいいか迷って、結局送れなくて。
それでもお店に来てくれればまた話せると思ってその日は寝た。

でも、それから一週間まるっと音沙汰なし。
そういう時に限って常連さんも来ぃへんし、LINEを送ろうにも向こうから来ないのに送っていいのか?とか思い出すとなんもできんかった。

相当うるさかったんやと思う。
ツムに「毎日毎日ジメジメしおってキショいねん!」とキレられ、怒り返す元気もなく「すまん…」といえば「謝ってほしいんとちゃう!」と怒られた。

何がいけなかったんや…と思い返すも特に悪いところも思いつかず、これはもうアカンのやろかと落ち込んでいたらツムからLINEが入った。

『名前ちゃんみつけたで。なんか勘違いしとるみたいやから直接話しーや。』

その後に今いる居酒屋のURLが送られてきた。
今ほどツムに感謝したことはないかもしれん。
そして多分これからもない。

急いで店を閉めて、夜の街を駆けた。

居酒屋に着くとツムが「あっちにおるで」と教えてくれ、名前ちゃんの後ろ姿を見つけた。

「名前ちゃん」

そう呼ぶと彼女はこちらをみて瞳を揺らした。

彼女の前に座り「ツムから急に呼ばれて、名前ちゃんとおるって言うから来たんやけど…デートしたの、後悔しとったりする?」と尋ねれば彼女は首を振った。

「じゃあなんでお店に来てくれなかったん?」

情けない顔をしとったと思う。
もしなんかしてしまったならちゃんと謝りたいし、喧嘩…とは違うかもしれんけど仲直りがしたい。

真剣な眼差しで名前ちゃんを見たら、彼女は気まずそうに「キスされて、好きだって言ってくれたけど付き合おうとかなかったからよくわからなくて、ごめん、避けてました…」と謝った。

「はあ!?ちょお待って、俺がキスして好きって言うたのも本気だと思われてへんかったってこと!?」

思わず大きい声を出してまい、名前ちゃんが怯えた。

「あ、すまん。怖がらせたいわけちゃうねん」と謝り、再度名前ちゃんをみれば「だって最近恋愛してなかったから、今時の子がどういう付き合い方するのとかわからなかったんだもん。下手にLINEして彼女ぶってるとか思われるのも嫌だったし…」と泣きそうな顔で伝えてくれた。

これはちゃんと言わなかった俺が悪い…。

自分のアホさに嫌気がさしつつ「すまん、言葉足りんかった」と謝る。

ここは漢をみせんと!と気張り言う。
目を見てしっかり、自分の気持ちが伝わるように。

「名前ちゃん、好きやねん。俺と付き合うてください」

そう言えば彼女は泣いていた目を擦り、笑って返してくれた。

「私こそごめんなさい。治くん、大好き。私のこと彼女にしてください」



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