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及川くんにバレた翌週から、体育祭の練習がありスイーツ巡りは中止になった。

青葉城西は付属校で人数も多く体育祭の競技への参加はほぼ任意のため、私みたいな運動を苦手とする生徒にはありがたい仕様になっている。

一応どれか一つには参加しないといけないルールがあるので私は応援団を選んだ。
練習は多いが運動神経があまり問われないので結構人気だったりする。

対して花巻くんや及川くんみたいなバリバリの運動部は騎馬戦やらリレーやら借り物競走やらと大忙しである。
こちらは個人の資質によるものが大きいので練習は少なめである。
部活も休まなくて済むのでいいのだろう。

放課後、練習の休憩中に花巻くんと目があった。
手を振り、こちらへ来る様子をみると花巻くんも休憩中なのだろう。

「名字さん、応援どう?」

「ダンスがえぐい。足が上がらない…」

「あー、今年チアみたいなのやるんだっけ?」

「去年は長ラン来ての応援だったから安心してたらこれだよ…失敗した〜」

心底嫌な顔をしてため息をついたら「ドンマイ」と笑われた。

当日はみんなお化粧と髪の長い子はポニーテール厳守なのも憂鬱の種だ。
戻れるなら種目決めのときに戻りたい…。

「あ、そろそろ休憩終わりだ」

「俺もだわ」

「バレーがんばってね」

「そっちもな」

手を振りあい別れると、遠巻きに見ていた応援団の子たちが寄ってきて「名字さん花巻と仲いいの!?」と聞いてきた。

「同クラで席が前後なんだ」

「羨ましい!」

「あ、もしかして名字さんが応援選んだのってそういう…?」

「花巻いっぱい競技でるもんね!」

「なにそれ青春じゃん!」

「当日めっちゃ可愛くしようね!」

私が何も言ってないのにキャーキャー盛り上がられてしまって訂正できず、応援団の中では私が花巻くんのために応援を選んだというのが暗黙の了解になってしまった。

それからというもの花巻くんと話していれば微笑ましい目で見られたり、休憩になればバレー部でも見てくる!?と体育館の方へ連れて行かれたりとまあなんとも面倒なことになった。

花巻くんは女の子からの人気もそれなりにあったので女子特有の面倒事に巻き込まれたくないなと思っていたが、まさか応援されることになるとは。

更に誤算だったのは休憩毎に体育館へ顔をだすようになってしまったのでバレー部のみなさんからも顔を覚えられたことで、みなさん私を見つけると花巻くんを呼んできてくれるようになったのである。

「最近よく来るけどどうしたの」そう花巻くんに言われ、まあそりゃ気になりますよねとため息をついた。

「なんか誤解が誤解を呼んで私が応援団に入ったのが花巻くんを応援したいからってことになっちゃって…」

「あー…」

「本当ごめん、訂正するのも面倒で流してたら大事になっちゃったんだよね…」

非常に気まずい空気が流れ、このままでは花巻くんに迷惑がかかる…いや、もうかかっているなと反省した。

「ちゃんと訂正してくる…迷惑かけてごめんね」

「あー、いいよ別に。体育祭も後少しだし気にすんな」

花巻くんは私の頭を撫でて、優しく笑ってくれた。

花巻くんがモテるのはこういうところなんだろうなあとぼんやり思った。



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