03

お礼の意味を込めて昨日の学校帰りにクッキーを買った。
治に見つかって「それ俺にくれるん?」とすごい欲しそうな目で見られたが「治のやない」と言って死守した。

侑から聞いた情報によると北先輩は3年7組らしい。
3年のクラスがある階に降りると、たった1年しか違わないはずなのにすごく大人びた雰囲気で、この場に2年の私がいることが変に感じられて居た堪れない気持ちになった。

しかし、お礼も伝えたいし、できることならお知り合いになりたいのでここは一踏ん張りである。

7組の前に着き、ドアのところにいる先輩に北先輩がいるか尋ねる。

「ちょっと待ってな…北〜、後輩が呼んどるで!」

大きな声で呼ばれ、教室にいた人たちが一斉に私の方へ向いた。
流石に威圧感があって、思わず身を縮こめたが北先輩がこちらへ来てくれて「ちょっと場所変えよか」と言ってくれたので助かった。

「この間は助けていただいてありがとうございました!」そう伝えれば「あれから大丈夫か。続くようなら先生にでも言ったほうがええで」と言われた。

「あの、これお礼です」と購入したクッキーを差し出し「お口に合うかわからないんですけど…」といえば「わざわざ買うてくれたんか。すまんな」と受け取ってくれた。

お互い言うこともなく沈黙が流れ、北先輩は「用が済んだんやったらクラス戻るな」と踵を返しクラスへと戻ってしまった。

名前すら言えなかった…。
侑たちがいう「隙がないねん」っていうのは全てにおいてそうなのか…とため息をついた。

その夜、部活から帰った双子から『名前って北さんと知り合いなん?』『いつ知り合ったん』『北さんはアカン』『勝てへん』と立て続けにLINEがあり、あまりにうるさいので無視を決め込んだ。

名前は伝えられなかったが、私のことは認識してくれたことがわかり一応前進はしたみたいで少し嬉しかった。



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