06
そして体育祭当日、朝から応援団の女の子たちに囲まれ白目を剥きそうだ。
「花巻どんなの好みかな〜」
「やっぱ清楚系でいく?」
「チアの服着るしギャルっぽくても可愛いけどね」
「名字さんはどっちが好き?」
そんなことを右から左から言われながら「お任せします…」と伝えると「めっちゃ可愛くしてあげるからね!」と頼もしい言葉が返ってきた。
午前の部は3年の選抜リレー、綱引き、借り物競走、男子騎馬戦があり、午前の最後に私たち応援団の応援合戦がある。
私は応援合戦以外特に出るものもないので後ろの方の日陰にいようとしたら、応援団の子達に「そこだと見えないよ!」「花巻のこと応援してあげないと!」と引っ張りだされ、一番前の席で見る羽目になった。
暑いし目立つしで勘弁してほしいが、彼女たちは心から私のことを応援してくれているので無碍に断ることもできなかった。
『プログラム一番、3年生による選抜リレーです。』
そんなアナウンスが聞こえ、選ばれた人たちがぞろぞろと集合場所へと移動する。
「ほら!名字さん、花巻あそこにいるよ!」
「あれ、もしかしてアンカー?」
「すごいじゃん!格好いいとこ見られるといいね!」
みんなが教えてくれるおかげで花巻くんがどこにいるか一発でわかる。
これはちゃんと好きなフリをして応援をしないと白けそうだなぁと気づかれないようにため息をつく。
「ほら、走るよ!」そう言われトラックの方を見るとちょうど花巻くんがバトンを渡されたところだった。
1位とは僅差で負けていたが花巻くんがバトンを受け取るとその差がだんだん短くなった。
もう少し、あとちょっと。
手に汗を握る展開に思わず大きな声で叫んだ。
「花巻くん、頑張れ!!」
それが聞こえたのかはわからないが、ニヤリと笑った彼は一位の生徒を追い抜いてゴールまで走った。
心臓がドキドキする。
単純すぎるかもしれないけれど、花巻くんのあまりの格好よさに胸の高鳴りが止まらない。
「格好よかったね!」
「花巻絶対名字さんの応援聞こえてたよ!」
みんながワイワイはしゃぐ中、私は真っ赤な顔を隠すべく手で覆ったのだった。
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