04
「…名前…名前!!起きなさい朝やで!!今日は学校に早く行く言うてたやろ!」
お母さんの声が聞こえ、目を開ける。
学校…?ああ、そうだ。今日は稲荷崎高校の始業式だ。
二年生になって、クラス替えもあるから早く行って確認しないといけないんだった。
「ご飯できてるから早く顔洗ってきなさい」
「はあーい」
「なあに、名前はまた起こしてもらったの?」
お姉ちゃんに笑われて「だって眠いんだもん」と返す。
顔を洗って歯を磨いて、髪の毛をしばり制服に袖を通す。
知ってる子と同じクラスだといいな、なんて思いながら朝食の席へとつく。
「あ、卵焼きや〜。私お母さんの卵焼き甘くて好きなんよね」
そう言って口に含むと口の中に甘い味が広がる。
ああ、この味だ。
「卵焼き久しぶりや。幸せやな〜」
「何言うてんの、昨日も食べたやろ」
「あれ、そうやったっけ…」
「名前、ボケるにはまだ早いで」
そう言われみんなで笑い合う。
楽しいな、幸せだな、お母さんのご飯美味しいな。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて食器を片付ける。
「今日はなんかある?」
「ううん、なんもあらへんよ。だからお昼には帰ってくる!」
「気をつけて行ってくるんやで」
「はーい、行ってきます!」
お母さんとお姉ちゃんに見送られて家をでて、自転車に跨り学校へと向かう。
途中友だちとすれ違って「名前今日早いなあ!」なんて声をかけられる。
「クラス替え私の分も見といてや!」
「任せとき!みたら即LINEするわ!」
「頼んだで〜」
手を振って分かれて、自転車を駐輪場へ置いて下駄箱へと向かう。
クラス替えの紙が貼られているところは混んでいて、私の身長だとあんまり見えなかった。
「困ったなぁ」そうつぶやいたら「俺が見てあげよか?」と声をかけられた。
誰だろ?と横を見るとバレー部の宮くんだった。
金髪だから、確か侑くんの方。
「ええの?」
「おん。名前教えて」
「名字名前。あ、あと友だちも見てほしいんやけどええ?」
「構へんよ」
友人の名前も告げて、宮くんに見てもらう。
背が高いといいなあと思った。
「あ、あった。名字さん俺と同じ2組やで。友だちはサムと同じやな。1組や」
「ほんま?みてくれてありがとお!宮くん、一年間よろしゅうな!」
宮くんと話していると友人が「名前〜!」と後ろから飛びついてきた。
「クラス離れてもーた!」と嘆けば「隣やん!すぐ会いにいくわ」と言ってくれ「うちらの仲はクラスの壁なんかに阻まれへんで!」と笑ってくれた。
「ほな名字さんまたクラスでな〜」
宮くんが手を振ってくれたのでもう一度お礼をいい、手を振り返す。
「あれ?名前って侑くんと知り合いやったっけ?」
「ううん、今初めて喋ったよ。クラス替えの紙見てくれたん」
「へ〜、ひとでなしもええとこあるんやな」
「ひとでなし!?」
「知らへんの?侑の方は顔はええけど中身がポンコツってよく言われとるで」
他人に対してポンコツって酷いいいようやなあ…と思わず苦笑いすれば「気になるなら放課後バレー部観に行かへん?」と誘われる。
「人格はポンコツでもプレーは格好ええんやで!」
にっこり笑っていった友人に、これは観に行くまで誘われるやつだなと思い「ええよ」と返した。
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