05
放課後、友人と待ち合わせて体育館へと向かった。
途中、稲荷崎のバレー部について色々説明してくれたので予備知識はバッチリだ。
いざ体育館へ入って観覧席へ行くと、結構な人数の女子がいて驚いた。
「宮ツインズは侑も治も人気すごいからな〜」
「にしてもすごくない?」
「今日なんか少ないほうやで」
そんな会話をしていたら、ピーッと笛が鳴り招集がかかった。
どうやらこれから練習が始まるらしい。
最初はパス練、次はスパイク練。
鋭いサーブをレシーブで返す様はみていてとても気持ちがいい。
バレーの練習風景は、初めてみたはずなのになんだかとても懐かしい気持ちになった。
休憩を挟み、今度は試合形式での練習をするらしい。
「名前、こっからすごいんやで!特に侑のセッティングはスパイカーがドシャッと決められるからな」
「へ〜、そうなんや」
熱のこもった解説に苦笑いしながらコートを見ると、コートの中の宮くんと目があった気がした。
友人が言う通り、試合形式の練習はすごかった。
一人一人の技術の高さと、それを可能にするチーム力。
もう繋げない、そう思うようなボールも必死に追いかけ次の人へと回す。
圧巻、その一言に尽きると思う。
「なんや今日の侑、いつもよりすごない?」
「サーブの威力も強い気ィするなあ」
そんな会話がチラホラと聞こえてきて、友人に「調子いいのかね?」と聞けば「そういう感じ…なんやろか…?」となんとも曖昧な返答がきた。
試合も終わり、さて帰るかと荷物を手に取り体育館を出る。
「今日は楽しかった?」
「うん、また見にきたいと思ったで」
「よっしゃ!ほな明日も行こ〜!」
「えっ、まさか毎日行くわけちゃうやろな」
「行くに決まっとるやろ!」
どうやら毎日付き合わされることになりそうである。
楽しく話していると「名字さん、ちょっとええ?」と宮くんから声をかけられた。
「?ええけど…」
「ほな、名前、私は先帰っとるわ。また明日な!」
「え、ちょ、待って…」
「もう少しで終わるから待ってもらってええ?」
有無を言わさぬその視線の鋭さに頷けば、いつもの笑顔に戻って「自転車とってきてええよ」と言われた。
自転車をとって正門まで向かえば、宮くんは既にそこにいて「さ、帰ろか」と歩き出した。
「あの、なんで私と帰るん…?私なんかしてもうた?」
あまりにも不可解な行動にそう聞けば「やっぱ覚えてないんやな」と悲しそうな顔をされた。
覚えてない?何を?
「ご、ごめんね宮くん。なんのこと言っとるのかサッパリわからんのやけど」
「全部なかったことにするつもりなん?」
宮くんは苦しそうにそう言って「すまん、なんでもあらへん。…また明日な」と手を振っていなくなった。
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