03

あれから特にどこかで会うこともなければご飯を食べることもなかったので、やはり宮くんの気まぐれだったのであろうか、そう思っていた頃だった。

お昼を友人たちと食べていると宮くんが廊下からそっとこちらを覗いていたので、誰かに用事でもあるのかと思い教室を見渡してみるが、彼は首を振り私に向かっておいでおいでと手を動かした。
幸いにも友人たちは宮くんに気づかなかったので「ちょっと席外すね」と言い、彼の方へと向かった。

教室から離れ、中庭へ向かう途中で宮くんに「どうしたの?」と聞けば「話したかってん」とだけ返ってきた。
中庭のベンチに座れば、宮くんが私にジュースを差し出し「飲んでええよ」と言ってくれたのでありがたくいただいた。
少し日差しが強くなっていたので、冷たいジュースはいつもよりも美味しく感じられた。

「またご飯誘おうと思ってたんやけど、会えなかったから誘えんかった。」

むくれた表情で言ってきた彼に失礼だけど少し笑ってしまう。

「気にせんでええよ」

と伝えれば

「気にせんでええとか…ちゃうねん!!俺が一緒に食いたかってん!!」

とますますむくれられてしまった。

さて、どうしたものかと考えを巡らせていれば横から「名字さんに怒ったって仕方ないでしょ」と落ち着いた声が聞こえてきた。

「角名…お前なんでおんねん!!」

「侑に貸した辞書が返ってこなくてLINEもしたのに既読もつかないから探しにきたんだよ。」

角名くんが「早く返してくれない?俺の机に置いといてくれればいいから」と宮くんへと続け様に声をかけると、「タイミング考えろや!」と怒ってすごい勢いで走っていってしまった。

残された私はどうしたものかと角名くんを見ると、角名くんは私の横へと腰をおろした。

「名字さんだよね?はじめまして。ごめんね、侑との時間邪魔しちゃって。」

あまりごめんねとも思っていないような声で謝られ、私はなんと言えばいいかわからず視線を彷徨わせた。
彼はその様子をみて面白そうに肩を震わせ、「名字さん、LINE交換しない?」と突拍子もないことを言ってのけた。
お断りするのも変なので「ええよ」とアプリを起動して交換すると「ありがとう、これで俺もオトモダチだね」と彼はにっこり目を細めた。

そして「手出して」と言われたのでその通りに手を差し出すと、手のひらにコロンと飴を落とされ「あげる」と一言告げ、そのまま来た方向へと帰っていった。
そんな彼を見て、なんとも狐につままれた気分になったのである。

角名くんがいなくなってしばらくすると、宮くんが急いで戻ってくるのが見えた。

「なんやねんあいつ!!ほんま腹立つ!!」

怒りを隠しもせず、息を切らしながら私の隣へと座ったので「お疲れ様」と声をかければ矢継ぎ早に「なんもされてへん??大丈夫やった??」と質問された。
「少しお話しただけだよ」と告げると落ち着いたのか、角名くんについて話し出した。
人のことをひとでなしとか言うねんあいつ!とかぷりぷりしながら言うものの、その顔は少し楽しげで角名くんと宮くんの仲の良さがうかがえた。

私は先程角名くんからもらった飴を口の中に転がしながら、次試合を見るときは角名くんのことも注目してみようかなとぼんやり思った。

昼休みが終わる前に角名くんへLINEで「ありがとう」と送れば「どうしたしまして」という一言とへんな狐のスタンプが送られてきて「侑にはLINE交換したことまだ内緒にしておいてね」と言われ、彼の目を細めて笑う姿が目に浮かんだ。



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