05
放課後、開放感に浸りつつ体育館へと向かった。
今までバレー部の活動はみてきたけれど、北先輩をしらなかったので彼がどんなバレーをやるのか興味がある。
双子に見つかるとうるさそうだけど、先程あれだけ釘を刺したから多分見つかっても嫌な顔をされるだけで済むはず。
邪魔にならないように二階へと行き、端の方でお目当ての北先輩を探す。
そして派手なプレーをしている人たちの中に、地味だけれど確実に球を拾っていく姿をみつけた。
ああ、この人はバレーボールも生活の一部のようにちゃんとやるのかと思った。
決して派手ではないけれど、個々の主張が激しい稲荷崎の中では唯一無二のまとめあげる存在。
所作に無駄がなく、綺麗だなと思った。
蒸し暑い体育館の中、彼のいるところだけ涼やかな空気が流れているかのようだった。
しばらくそうやってみていたら、休憩の合図がなりバタバタと音を立てて双子が上ってきた。
「名前!!」
「俺のプレー見とった!?」
「見とらへん」
「「なんでや!!」」
「私の行動制限せんといてって言うたやろ」
「一緒におるだけやもん」
「制限はしとらへん」
屁理屈を捏ねている双子に文句を言おうとしたら「侑、治。休憩やっていうとるやろ。遊んでないで水分とって体休めんか」と下から声がかかった。
「「すいませんっした!!」」不服そうな顔を隠そうともせず口先だけ謝った彼らに声の主である北先輩は「行動を伴わせなあかんで。早よ下降りて来ィや」と再度注意をした。
「格好ええなあ」と私が漏らせば「「俺のが格好ええ!!」」と声をハモらせる。
いい加減しつこいしそんな大きな声で言えばみんなうるさくて迷惑だろうと「早よいかんか」と低い声を出せば「怒らんといて!」「堪忍してや!」とそそくさと逃げていった。
双子が下に降りたので、北先輩の方を見れば目が合って胸の横で小さく手を振ってくれた。
北先輩って手振るんだ!!と悶えた私に侑が「アカーーーン!」と大声を出し、今度は監督にも怒られていた。
ちょっとザマァみろと思ったのは内緒だ。
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