01
きっかけは二年生になって最初の席替えで、席が隣になったことだった。
侑くんが窓側の席で、私がその隣。
侑くんは一年生の時から有名で、この学校に在籍している人で彼のことを知らない人はいないと思う。
私もその一人で、直接関わったことはないけれど“バレー部の宮侑”についての噂話は友人からよく聞いていた。
曰く、見た目はいいが性格は最悪。
バレー以外に興味がないのか、女子に告白されても「知らんヤツから告られてもキショいだけなんやけど」とまあ、身も蓋もないフり方をするらしい。
人でなしと言われるだけはある。
そんな噂を聞いていたのもあり、なるべく関わらずにいようと思っていた矢先の席替えだった。
ついてないなぁ、と思わずため息がでる。
それでも関わらないようにとなるべく気配を消していたのに、席替えをしてしばらく経った時、授業がつまらなくて窓の外を眺めていたら侑くんと目があった。
ニヤッと笑い、私にだけ伝わるように声には出さず「俺のこと見とんの?」と唇が動く。
誤解だと慌てて首を振り訂正したら、侑くんは肩を震わせ「冗談やって」と楽しそうに笑った。
年相応の、男の子の顔だった。
それから侑くんとはよく話すようになって、私が今まで聞いてきた噂は噂でしかなかったことに気づいた。
たしかに人でなしの面も大いにあるけれど、仲の良い人たちに対しては誠実で、時には優しさも見せる。
もっと怖い人かと思っていたが、楽しければ大きな声をあげて笑うし、不貞腐れてよく拗ねたりもする。
特に治くんと喧嘩しているときは普段よりも幼くなり、本当に高校生かと疑いたくなった。
授業中も、袖を引っ張られて目線を向ければ教科書にくだらない落書きがされていて、危うく声を出して笑いそうになったり、隙があれば笑わせにくる侑くんにやり返したらそれがバレて先生に二人して怒られたこともあった。
侑くんの隣になってから毎日が楽しくて、関われば関わるほど惹かれていった。
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