02

「名字さん、今度の土曜日空いとる?」

仲良くなって暫く経った頃、侑くんから週末の予定を聞かれた。

「うん、特にこれといった用事はあらへんと思う」

「その日、うちの体育館で練習試合があるんやけど…」

「観に行ってええの?」

「おん!来てくれたら嬉しい!」

顔を綻ばせた侑くんに、思わず私も口元を緩める。

普段は不機嫌そうな顔をしていて近寄りがたいけれど、笑った顔は少年のようで可愛らしい。

「応援いっぱいするな!」

「名字さんから応援されたら百人力やわ」

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家に帰ってからも、侑くんから試合を観に来ないかと誘われたことが夢みたいでどこかふわふわしていた。

だって、応援してくれる子に対して喧しブタだのとメンチ切ってるような人が誘ってくれるなんて。

少なからずとも好意を感じてしまうのは、自意識過剰ではないと思いたい。

そんなことを考えながらベッドに入ると、タイミング良く侑くんからのメッセージが届いた。

内容は『名字さんに格好ええとこ見てもらえるよう頑張るからな!』と書いてあって、そんなこと言われたら期待してしまうじゃないか。

赤くなる顔を枕に埋め、なんて返事をしようと迷った挙句『これ以上格好ええとこ見せられたら困るわあ』と送信した。

ちょっとだけ私の想いをのせつつ、少し冗談っぽさも残して。

送った文字はすぐ既読がついて『惚れさせてもうたらすまんな』という言葉と、ニヤリと笑うキツネのスタンプが返ってきた。

ああもう、それってどういう意味ですか。



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