09
教室に戻り、カバンの中に入っているコンタクトを探す。
応援団をやるなら持っていけと言ってくれた姉に心の中でお礼を言った。
そういえば初めて休日にあったときもコンタクトにしていて、あの時も花巻くんは私のことを可愛いと褒めてくれていた。
あの時は何とも思っていなかったからその態度にイライラしたけれど、今思うとあんなに照れてくれるなんて嬉しいことこの上ない。
もう少し可愛い態度をとればよかったと後悔しても仕方ないのだけれど。
メガネからコンタクトへ交換し、暑い中い外にたために崩れた化粧も直す。
鏡を何回も見て、変なところがないか確認する。
今まで見た目にそんな拘らなかったけど、花巻くんに少しでも可愛いと思われたいと思うなんて、恋ってすごい。
『次は、応援団による応援合戦です。応援団の皆さんはグラウンドに集合してください』
外から聞こえてきた放送に慌てて教室をでて階段を駆け降りる。
グラウンドへいけば、応援団の子たちがもう集まっていて走ってきた私へ視線を向けた。
「名字さん!コンタクトにかえてきたの!?可愛いじゃん〜!!」
「これは花巻も喜ぶでしょ!」
コンタクトへと変えた私に、みんなが褒めてくれる。
この子たちがいなければ私はきっと花巻くんへの恋心に気づかなかったし、頑張ろうとも思えなかった。
「あ、あのね、私、みんながいるから頑張れるの。ありがとう!」
そう伝えればみんなびっくりした顔をして「友だちなんだから当たり前じゃん!」「恋のことなら任せなよ〜!」「でた!恋の伝道師!」などと言って笑ってくれた。
「友だちになってくれるの!?」と聞けば「もう友だちでしょ!」とこたえてくれる。
体育祭、めんどくさいなんて思ってごめんなさい。
私、この学校に入って応援団になってよかった。
嬉しくて泣きそうになる私に「泣いたら崩れるよ!」「あと少しだから頑張って!」と背中を軽く叩かれる。
『それでは応援団による、応援合戦です』
アナウンスの声と共に音楽が鳴り、今まで練習してきたことが走馬灯のように流れる。
大丈夫、きっとできる。
みんなと一緒にグラウンドへ駆け、ポンポンを持って踊る。
花巻くんは見てくれているだろうか。
今までで一番頑張るから、私のことをみていてほしい。
終わったら私の気持ちを伝えよう、そう心に決めてポンポンを高く上に飛ばした。
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