ヒギリ
「治くん、起きとる…?」
「んー…起きとるよ」
夜中、なかなか寝つけなくて隣に横になっている治くんに声をかけると治くんも寝られなかったのか返事が戻ってきた。
「いよいよ明日やなあ」
「緊張してもうて寝られへん…」
「そうは言うても寝えへんと明日ブッサイクな面みんなに晒すことになんで」
「それだけは嫌や…!一生に一度…多分一度の晴れ舞台やで!?」
「なんで言い直したんや。一度や一度!」
そう、明日は私と治くんの結婚式なのである。
入籍自体はもう済ませているので式と披露宴だけなのだが、ゲストのみんなが喜んでくれるかとか、式は滞りなく進むだろうかとか、忘れ物はないかとか本当に心配事は尽きない。
「俺は早よみんなに名前は俺のお嫁さんやでって見せたいで」
「私かて治くんのこと自慢したいけど!みんなに写真見せた時こんなイケメンどこで捕まえたんやってすごかったんやで?」
「そら俺イケメンやし?」
「はいはい、そうですねイケメンですねー」
お互いの顔が見えるように向き合い直し、そのやりとりに目を合わせて笑い合う。
治くんと結婚して、毎日が本当に幸せだ。
「名前が何考えとんのか当てたろか?」
「えっ、そんなんわかるん?」
「俺のこと好きすぎてどないしよ、やろ!」
「あは、治くんは幸せそうでええなあ」
「名前は違うん?」
「ううん、すっごく幸せやで」
アホみたいな会話で私の緊張をほぐしてくれる治くんに、なんて愛おしいのだろうと思う。
「ほら、そろそろ眠なってきたやろ?明日は早いんやからとっとと目瞑り」
治くんはそういってギュッと抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いてくれた。
だんだん落ちてくる瞼に優しいキスがふってきて、薄れる意識の中「愛しとるよ」という声が聞こえた。
花言葉:幸せになりなさい
お題:真夜中のおしゃべり
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