ウォールフラワー
私の土曜の朝は早い。
朝起きると、まず顔を洗い歯を磨く。
眠い目を擦りながら服を着替え、朝食の準備にとりかかる。
今日は何にしようかなあと冷蔵庫を開け、昨日の残り物をレンジにいれ、賞味期限の近い卵をとり目玉焼きを作る。
ご飯にするかパンにするか迷ったが、食パンが残り一枚しかないことに気づき炊飯器からご飯をとりだす。
炊き立ての、いい香り。
それだけだと物足りないので面倒くさいけれど朝から鮭をフライパンで焼くことにした。
「名前…おはよ…」
眠たそうに目を擦って起きてきたのは私の旦那さんである一静さんで、キッチンにいる私のことを後ろから優しく抱きしめた。
眠気に勝てなさそうに私に寄りかかる様は大きい体をしているのに子どもみたいでとても可愛い。
それでも料理の邪魔にならないようすぐ離れ「飲み物は何にする?」と準備を手伝ってくれる。
葬儀屋という土日祝日も関係ありませんな職業のため、一静さんはいつも忙しそうだ。
今日もお仕事が朝から入っていて、何件かご不幸が重なったらしいので帰りもきっと遅い。
「名前の折角の休みなのに朝からご飯作ってもらってごめんね」
申し訳なさそうに言った彼は「今度の祝日、休み取れそうだからどこか一緒に行こう」と続けた。
忙しい中で、私のために時間を作ってくれる一静さんがとてつもなく好きでたまらない。
「楽しみにしてるね」私がそう笑えば、一静さんはふにゃっとした顔で「久々のデートだね」と嬉しそうに笑ってくれた。
自宅を出る時間が近づき「いってらっしゃい」と抱きついたら「帰りが遅かったら寝てていいからね」と頭を撫でられた。
ごめんね、その約束は守れそうにないの。
だって疲れて帰ってきた貴方が私をみて嬉しそうに笑うのを見たいから。
そしてまた朝に、起きたての眠たそうな顔で私を見てほしい。
私ね、大人っぽい貴方が少しだけ子どもっぽくみえるあの時間が好きなの。
花言葉:愛情の絆
お題:眠たそうな顔
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