スペアミント
小さい頃から雷が嫌いだった。
あの耳に響く音、体に伝わる大きい振動、そしてすごい雨。
何もかもが嫌で、雷の予報がある日は本当に憂鬱で仕方なかった。
子どもの頃は家族が家にいたから一人になることなんてなかったのでどうにかやってこれたけれど、大人になって一人暮らしをしている今、一緒にいてくれる人なんかいない。
ピカッと光ってすぐ、大きな音と共に雷が落ちた。
運の悪いことにブレーカーが落ちたみたいであたりが真っ暗になった。
ただでさえ怖いのに挙句停電とはついていない。
泣きそうになっていたら、玄関からガチャガチャと誰かが入ってくる音がした。
暗くて上手く見えない中、近くにあった椅子を手に持ち構えた。
遠慮なく振り下ろすんだ、と意気込んだところで慣れ親しんだ声が聞こえた。
「ちょっと、ソレまさか僕に振り下ろそうなんて思ってないよね」
声の主は彼氏の蛍くんで、スマホのライトで私を照らしてくれた。
「蛍くん…だ…。なんで…インターホンは…?」
緊張が緩み、安心して椅子をおろし質問する。
「停電してるからインターホン鳴らしても反応なかったから勝手に入ったんだけど。名前雷嫌いデショ」
「心配してきてくれたの!?」
「別にそうは言ってない。たまたま近くに来たから寄っただけだから」
照れ隠しなのかツンとした口調で顔を背けて話す蛍くんに、心底安心した。
「ほら、音が怖いならこれ聞いてなよ」
そう言って蛍くんは普段蛍くんが使っているヘッドホンを私の頭にのせてくれた。
心地よい音が耳に流れ、雷の音を消してくれる。
私が安心するように隣に座っていてくれる蛍くんに、小さく「ありがとう」と言えばおでこをべしっと叩かれた。
素直じゃないなあと思い笑うと、嫌そうな顔で私のことを見てくる。
しばらくそうやっていると停電が解消されたのか電気がついた。
外を見るといつ間にか雷はやんでいて、空には虹がかかっていた。
花言葉:温かい心
お題:雷雨
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