06

その日は友だちと放課後に教室で机にお菓子を広げて他愛のない話をしていた。

どちらからともなく日も暮れたきたし帰ろうかと片付けをしていたら「あれ、侑くんの机のとこに落ちとるの鍵やない?」と友人に聞かれ、指をさした方を見れば確かにそこには鍵が落ちていた。

その鍵には以前侑くんが好きだと言っていたバンドのロゴがついていたので可能性は高いだろう。

「どうせこれで帰るし名前は体育館寄って渡してきたらどうや?」

そんな友人の提案に、鍵がないのは困るだろうし、もし侑くんのでないとしても職員室に戻ればいいだけだしと二つ返事で了承し体育館へと向かった。

体育館へ入ると、先輩らしき人が私を見て「なんか用か?」と聞いてくれ、鍵のことを伝えると「部室におるから行ってええよ」と言われたので遠慮なく行かせていただくことにした。

部室に着いて扉をノックをしようとしたら、楽しく話す侑くんたちの声が聞こえた。

「侑最近名字さんといい感じじゃん」

「よく一緒におるの見るよな」

タイミング悪く私の話をされてしまいノックするのが憚られ、ドアの横で少し待つことにした。

「名字さんも満更じゃない感じだよね」

「ツムは名字さんに告白とかせぇへんの?」

「はあ?名前に告白するなんて、罰ゲームとかでない限り無理や」

聞こえてきた言葉は無情で、簡単に私の心をドン底まで突き落とした。

この場にいたら侑くんたちが出てきたときに鉢合わせてしまう。

どんな顔でさっきのセリフを言ったのだろう。
馬鹿にしたような顔?
それとも呆れたような顔?

考えれば考えるほどつらくて、逃げるように部室を後にした。

急いで体育館へと戻り、先程の先輩に鍵を押し付けバス停まで駆けた。
先輩が「自分、大丈夫か?」と心配してくれたけれど、それに返事する余裕もなかった。

今までのあの優しさはなんだったのかとか、好きでもないなら思わせぶりな態度をとらないでほしいとか、もう私の心はぐちゃぐちゃだった。

家に帰ってから母に心配されたけど、なんでもないで押し通して夜ご飯も食べずにベッドへ身を投げた。

明日なんてずっと来なければいいのに。



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