向日葵

電車で初めて見かけた時、姿勢の綺麗な人だなと思った。

筋肉のついたがっしりとした体型からは、何らかの運動をしていることが伺える。

他の人がスマホをみたり音楽を聴いている中、その人は何かをするわけでもなくただ真っ直ぐ前を向いていた。

気づいたら毎朝探すようになっていて、これではストーカーみたいではないかと自分の行動に呆れるしかない。

彼は背が高いので周りの人から一つ分頭が飛び出ていて、見つけるのは簡単だった。

ほんの数駅だけれど、それが私の毎日の楽しみになっていた。

ところが11月になると、彼を見かけることがなくなった。

大人っぽかったし、三年生だったのかもしれない。
これから受験を控えていたら登校する日は少なくなるだろうし、もしかするとこの間見かけたのが最後だったのかも。
そう思うと自分が思っていたよりも落ち込んで、もしかするとこれは恋だったのではないかと思った。

あの真っ直ぐな瞳に一瞬でも私をうつしてもらいたかった。

後悔しても仕方がない。
もし次会うことがあれば話しかけてみよう、そう思った。

意外にもその日はすぐにきて、部活に遅刻すること覚悟で同じ駅で降りた。

「あの!すみません!!」

上着の袖を引っ張り、声をかける。

「なにか?」

話しかけたはいいが何を話すかまとまっていなくて、わたわたしていると「ゆっくりでいいから落ち着いて」と言ってくれた。

少し威圧感のある見かけよりも優しいのかもしれない。

「は、はじめまして。こんなこと言うと気持ち悪いかもしれないんですけど、真っ直ぐな瞳がずっと格好いいと思っていて…その…お話ししてみたかったんです」

一生懸命絞り出した言葉だけど、やっぱり引かれただろうか。
伝えたいことは伝えたし次の電車に乗ろう、そう思った時だった。

「それは、友だちになりたいということか?」

私の目をしっかり見て、私の言葉を理解しようとしてくれている。

「それは申し訳ないのだが断らせてくれ」

ですよね!と思ったが、やっぱり少し悲しくて泣きそうになる。

「見られているのは知っていた。俺もあなたのことを見ていたから。なので友だちではなく彼女になってくれるなら連絡先は交換しよう」

続けられた言葉の意味が一瞬よくわからなくてポカンとしていると「どうだろうか?」と聞かれた。

「よ、よろしくお願いします…」

「では、今日は時間がギリギリなのでまた明日」

そう告げ足早に去っていく彼をみて、今自分に起きたことが夢ではないかと頬をつねった。



花言葉:私はあなただけを見つめる

岩ちゃんかワカトシくんで。
愛音様、リクエストありがとうございます。



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