ユキヤナギ

「あれ、大地帰ってたの…?」

深夜にゴソゴソと音がして目を開けると、そこには仕事へ行ったはずの大地がいた。
今日は確か夜勤で帰りは朝のはずで、今ここにいるわけがないのだ。

「あ、すまん。名前起こしちゃったか…」

困った顔をして私の頭を撫でる彼の手が気持ち良くてまた眠気が襲ってくる。

「ちょっと事件が発生しちゃってしばらく家に帰れそうにないから着替えだけ取りに来たんだ」

申し訳なさそうに言う彼に「身体壊さないようにね」と言いギュッと抱きつく。

「いつも寂しい思いさせて悪い」

優しく抱きしめてくれる大地はいつもそうやって私のことを気にかけてくれる。

でも、警察官のお仕事は市民を守ることで、それをわかっていて一緒にいるのだ。

「大丈夫、気をつけて行ってきてね」

荷物を取りに来ただけだと言っていたし、そんなに時間もないのだろう。
眠い目を擦って玄関まで大地を見送りにいく。

「俺、帰ってきたときに名前がお帰りっていってくれるのが一番嬉しいよ。俺と結婚してくれてありがとう」

これから危険な現場に行くのに、大地は幸せそうな顔で笑った。
高校の時から変わらないあのキラキラした笑顔で。

「私も大地と結婚できて嬉しい。もうすぐ3人になるし、楽しみがいっぱいだね」

「なんかあったらすぐ呼べよ。駆けつけるからな」

「うん、わかった」

「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」

これからしばらく忙しいなら目が覚めてよかった。
瞼の裏に焼きついた大地の笑顔を胸に、先程から激しい動きをするお腹へと手をやる。

「早くパパに会いたいね」

そう声をかけたら、返事をするようにお腹を蹴られた。

あなたのパパは世界一格好いいんだよ、そう伝えながらまだ暖かさの残る布団へと入った。



花言葉:愛情


お題:素敵な笑顔



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