ワラビ

青葉城西バレー部にはマネージャーがいる。

その子は国見の幼なじみでバレーの知識もあるし、なにより及川に対して騒がないので即採用になった。

マネージャーになってからわかったのだが、彼女には少し困った癖がある。

「…名前ちゃん、俺の顔になんかついてる?」

「花巻先輩、花巻先輩はどうして眉毛が短いんですか?」

気になったらそのことばかり考えてしまうみたいで、マネージャー業は疎かにしないものの、ジッと見つめるその目に最初は勘違いするやつが続出した。

かくいう俺もその一人で、くりくりとした大きな目で見つめられるとその気がなくても胸は高鳴ってしまうのだ。

国見は慣れっこみたいで、そうやって人を見つめる幼なじみをみつけては頭をはたいて連れ戻している。

「こいつ、気になったらそれに一直線なんです」

ため息とともに吐いた言葉は心底面倒くさそうで、国見も苦労してるんだなとちょっと同情した。

しかし最近のターゲットは何故かほぼ俺で、それは本気で言ってるのか?と聞きたくなるようなことを真っ直ぐな目で聞いてくる。

一番ひどかったのはこの間「花巻先輩は女たらしって聞いたんですけど本当ですか?」と聞かれたときで、その根も葉もない噂にどこで聞いたのかと優しく問い、噂を流したであろうやつらにはその後ちょっとだけ痛い目にあってもらった。

最近国見は名前ちゃんに絡まれる俺を横目でみてそのまま素通りするようになった。

助けないほうがいいでしょうと目が言っていて、俺が名前ちゃんを好きなことを気づいているのが憎らしい。

そして今日、そんな彼女から爆弾発言を頂戴した。

「花巻先輩、英から花巻先輩が私のこと好きって聞いたんですけど本当ですか?」

彼女の口から発せられた言葉に一瞬頭が真っ白になって、その原因である国見を探せばまずいといった顔で一目散に逃げているのを視界の端に捉えた。

「国見!!!」

大きな声で叫ぶも多分逃げた国見は戻ってこないだろう。
あいつ後でしばく。

「名前ちゃん、そういうのは誰かから聞いても本人には聞かないものなんだよ」

誤魔化せるだろうかと内心だらだらと汗をかいて、名前ちゃんに言い聞かせる。

「でも花巻先輩」

彼女は少し考える素振りをし、俺の目をみてゆっくり口を動かした。

「私、それを聞いて嬉しいって思ったんですけど、どうしたらいいですか?」

俺は茹でたように赤くなる顔を両手で隠し、思いっきりしゃがんだ。

「花巻先輩?」

不思議そうに名前ちゃんが俺の顔を覗くけど、逆効果すぎて死にそうだ。

「マッキー!よかったね!」

その様子をどこかで見ていた及川が飛んできて、そんな言葉を言うので八つ当たりのように蹴飛ばした。



花言葉:不思議


愛音様リクエストありがとうございます!



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