コニカルブラック
「名前チャン、昨日どこ行ってたの?」
私にそう問いかけたのは幼馴染である黒尾鉄朗だ。
ふざけた物言いをしているが、こういう時の鉄朗は大抵怒っていてこちらが何か言ったところで聞いてくれない。
「サークルの飲み会に行ってたけど、それがどうかした?」
「野郎がいるって聞いてないんだけど?」
「サークルに女の子しかいないと思うの?」
さっきまで顔に貼り付けていた笑みを外し、私を壁際へと追いやる鉄朗にいつもの冷静さなどカケラもない。
背後にある壁が大きな音を立てて叩かれる。
「なあ名前、他の男の前で酔った姿見せたのかって聞いてるんだけど?」
いつからこんな風になってしまったんだろう。
少し前まではすごく優しくて、私がやりたいと言ったことは二つ返事で付き合ってくれて、すごくいい幼馴染だと思っていたのに。
嫉妬は人を醜いものへと簡単に変えてしまう。
「鉄朗、私もうこんなの嫌だよ。昔の鉄朗に戻ってよ…!」
必死にそう言えば、鉄朗は冷たい目で私を見下ろした。
「何を勘違いしてんのかしらないけど、名前は俺から逃げられると思ってんの?」
「俺の声を聞いただけで感じちゃうのに?」
「長い時間かけて俺なしで生きられないようにしたんだ」
「なあ名前、諦めて俺に堕ちろよ」
耳元で囁かれる声に頭がぼんやりする。
ここで負けてはダメだと頭では分かっているのに、鉄朗が触れる場所が熱を持つ。
「抵抗しないのは了承だと捉えるからな」
その言葉を最後に、鉄朗は私の唇へ噛み付くようなキスをする。
もう二度戻れない幼馴染という関係を思い、一粒の涙が私の頬を伝った。
花言葉:嫉妬
お題:甘い恋じゃなかった
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