08

昨日はなんとかやり過ごしたけれど、今日はお昼に侑くんに捕まった。

「名前、一緒ご飯食おうや」

断ろうとしたら気を利かせてくれた友人が「喧嘩したなら仲直りしたほうがええんちゃう?」と小さく私に言い「ええな、みんなで食べよう」と勝手に返事をしてしまった。
説明していない私が悪いのだけれど、まさか一緒に食べることになるなんて。

侑くんの前で食べるご飯はなんの味もしなくて、みんなで何か話しているけどそれも全然耳に入ってこない。

早く時間が過ぎないかなと時計ばかりみてしまう。

「なあ、名前もそう思わへん?」

急に呼ばれた名前にびっくりして「え、うん、そうやね…?」と思わず肯定したら「名前もそうなんやな〜」と侑くんが嬉しそうに私の頭へと手を伸ばし、優しく撫でた。

「気安く触らんといて!!」

反射に近かったと思う。
触れられた途端、全身に走る嫌悪感。
私は侑くんの手をすごい勢いで払い除けた。

自分のやったことにハッとして侑くんの顔を見ればすごく傷ついた顔をしていて、その顔を見ていたくなくてたまらず逃げた。

なんでそんな顔をするの?
罰ゲームじゃないと告白したくないくらい私のことなんとも思ってないんでしょ?

こんな苦しい思いなんかするくらいなら好きになんてなりたくなかった。
侑くんと関わった今までをなかったことにしたい。
全部、全部忘れてしまいたい。

午後の授業は出る気になれず、保健室へと行き「休ませてください」と頼んだ。
先生も私の尋常じゃない顔色をみて「ゆっくり休みなさい」と声をかけ、ベッドへと連れて行ってくれた。

横になって少し落ち着きを取り戻すと、置いてきた友人のことを思い出した。
謝らないととスマホを手に取るが、ここ数日の精神的疲れで身体は限界を迎えていて、自然と意識は夢の中へと吸い込まれていった。



back