04

一静さんと外に出てから一週間、部屋を抜け出してはまた一静さんがいないか庭を探した。

今まで家で見たことのない顔だったし、あの時家に来ていたのはたまたまだったのだろうか。
一人で外に出て探すわけにもいかず、もう諦めてしまおうかと思った時だった。

珍しく父様から呼び出されて書斎へ行くと、そこには一静さんがいた。

「名前、この間からうちと取引するようになった会社の御子息の一静くんだ。お前もなにかとお世話になることがあるだろうからご挨拶なさい」

「お初にお目にかかります…名前と申します」

スカートを両手で摘み、片方の膝を曲げお辞儀をする。

「はじめまして、名前お嬢様。松川一静です。いやあ、名字さんにこんなお綺麗なお嬢様がいらしたとは驚きました」

一静さんは“松川一静”さんというらしい。

『お嬢様、今挙げた方はパーティーなどでお会いした時に失礼があってはならない方々ですぞ。ゆめゆめお忘れのなきように』

そういえばじいやが挙げた中に“松川”という名前があった気がする。
一静さんがまさかそんなすごい人の御子息だとは。

父様と一静さんが楽しそうに歓談する中、横でニコニコと笑顔を振りまく。

しばらくすると父様に「名前、お前は習い事があるだろう。下がりなさい」と声をかけられ、お辞儀をして部屋を後にする。

一静さんも初対面のような対応をしていたし、あの日私と会ったことは多分内緒なのだろう。
婚約者もいる私が異性と二人きりなんて許されない行為なのだから。



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