いつもの君と、不確かな約束
あの言葉は、そういう意味だと受け取っていいのだろうか――。
窓辺に立って物思いに耽るだなんて柄ではないのだが。
事件は収束したとはいえまだ会社の立て直しには労力が必要なわけで、机上に山と積まれていく仕事に嫌気が差し束の間抜け出した左門は窓枠に身体を預ける。
何度も反芻してしまうのは、満帆商事を乗っ取られた際に叱咤してくれた彼女の、円山詩織の姿。
あの時はいろいろと慌ただしく、なんの確認もできないままに過ぎ去ってしまった。恐らくはそういう意味で間違ってはいないのだろうとは思うものの、時間が経つほどに自信はなくなってきている。
スカイツリーデートがしたいと言っていたので高所恐怖症を克服すべく努力をしてはいるのだが。
「……スカイツリーって何メートルだよ……」
まだまだ克服には遠く、脚立や二階からの眺めで精一杯。正直、ここから外を見下ろすだけで足が震えるのだから格好がつかない。
「あ、左門さん!」
振り返ればそこにいたのはいつもの台車を押した円山。海外事業部から出てきたところのようだ。
「お届け物、机の上に置いてますから!」
いつもの笑顔で、いつもの様子で。
そう、彼女は変わらない。以前から、そして今も。だから自信が持てないのだ、あれがそういう意味合いなのだと。
いずれスカイツリーデートに誘える日が来たなら、彼女の真意を確かめ疑問を解消する心積もりはしているのに、その日がいつ来るのかが問題なわけで。
「ありがとう」
片手を上げて応えると、円山は満面の笑みで会釈し「待ってくださいよ〜!」とこれまたいつものごとく庶務二課の面々を追いかけていく。
ため息が落ちる。
……その声を、姿を、想うだけで心音が跳ねることだけは、もう確定済みなのだ。
執筆:13.10.09