それはきっと、酒のせい

 メリージェーン洋子こと大山恒夫の店が、スナックからバーへと新装開店するということで、お祝いを兼ねて飲みに訪れた。
 どちらにせよ夜の店であることに変わりはなく薄暗い雰囲気はそのままに、以前より幾分落ち着いた店内で遠慮ないやり取りをしながら飲むアルコールは美味しく、気がつけば自覚する摂取制限容量を上回っていた。

 たまたま。偶然に。
 白石が訪れて一時間ほど経過すると藍沢も現れて。

 開店日当日はスナック時代の常連や恒夫の知人友人も駆けつけるだろうかと、あえて日をおいて訪れた今夜。藍沢も同じように考えたのかもしれない。
 カウンターで恒夫と話しながら飲む白石と、なぜかボックス席に一人居座り静かに飲む藍沢と。
 他に客がいないでもなかったものの、カウンターの内と外とボックス席と、離れているのに会話は成り立ち、穏やかに時間は流れた。


 飲みすぎた。

 浮遊感があり、少しの高揚、頬や手足の熱っぽさ。明らかな酔いの自覚症状。でも気分は悪くない。


 『 めぐり愛』を出て、二人並んで歩く。
 ふわふわ、ふわふわ。足取りはしっかりしているつもりで、だけど他人から見ればどうだかは自信がない。
 ふわふわ、ふわふわ。ゆっくり進む歩幅、いつもより距離が近かったのか互いの手の甲が掠める。

 ふと、戯れに触れる中指を絡めた。隣にある肩は何事もなかったように、揺れることもなければ顔を向けられることもない。視線は絡まないのに、ただ、ただ握るように絡め返される。

 きっと明日には忘れてしまっている。

 忘れたふりをする。二人とも、きっと。