一息つこうと外へ出た。なんとなくヘリポートへ向かってしまうのは、過去の名残りのようなものだろうか。エマージェンシーロードをゆっくりと歩む。
藍沢の視界に、柵に腰掛けて空を見上げる姿。随分と身体を反らせて上を見ていて、
「落ちるぞ」
思わずその頭を押し戻した。
「藍沢先生」
簡単に前方に重心を移す頭部。手のひらのうえを流れるようにひとまとめにされた黒髪が滑っていく。振り返りもせずに笑う白石は屈託がない。
「なにしてる」
「んー、息抜き?」
「息抜きで青空の下倒れ落ちようとしてるのか。頭部打撲で脳外の世話になるか?」
「落ちませんー」
藍沢を見上げる白石の笑顔に、自然と口元がゆるむ。
ほら、と片手に掴んでいた缶コーヒーのひとつを差し出せば、当たり前のように二人並んでそれぞれ柵に腰掛けた。
「藍沢先生は?」
「息抜き」
「一緒だね」
何が楽しいのか缶に口をつける白石の表情はにこやかで、いい天気だもんねと続ける。
確かに秋晴れとでもいうのか、眼前のヘリの上では、薄い雲がひとつふたつ浮かんでいるものの澄んだ空気の青空が広がっている。
「なんて言うか、ピクニック日和だよね」
そんな発想をするのは、自分の経験を振り返って出てきたものなのだろうか。なるほど、と己とは違う視点からの表現に半ば感心していれば、白石が拗ねた目付きで見つめてくるのが横目に入った。
「バカっぽいと思ったでしょう」
そんなことはないのに勝手に膨れる顔も年齢より幼く見えて、……だからどう感じたかなんてことは、言葉にする必要もない。
「これでホットラインなんて鳴らなければね」
そう言って笑う表情のやわらかさ。
その顔が何故か無性に見たくなってここに来ただなんて、もちろん口に出しはしないけど。