いたずら、

 鴎外が執務室に戻ってくると佐登が電話をかけていた。一瞬視線が向いて、おかえりなさい、と口元が動くのが見えたが電話対応中だったため、軽い会釈にとどめたようだった。鴎外は執務室まで上がってくる電話なら、どこかの取引先からだろう、と思いながら自分の椅子へ腰掛けた。
「――――はい、かしこまりました。それでは、森の予定も確認いたしまして、」
 やはり取引先からか、と鴎外は少し深く椅子に腰掛けた。ちろり、と佐登を見てみれば、片耳に受話器を当て、もう片方の耳はちょうど垂れかかる髪を上げたところだったのでよく見えた。新しく買ってあげたばかりのルージュがやけに目を引いた。見られていることに気付いた佐登の視線が一度こちらに向いて、そして、照れたように微笑んだ。
「ええ、こちらとして――――もっ、」
 佐登の声が裏返った。電話口でどうかしましたか、と言われているが聞こえ、佐登がいえ、なんでもと努めて冷静に返そうとしているが、まだ声は震えており、鴎外は楽しそうにほくそ笑んだ。その手はゆるゆると、佐登の腰から尻を背広の上からなでている。ゆるゆると、形を確かめるようになでていた手をスカァトの中へと潜り込ませて、空いている手で、スカァトをめくりあげる。
 落ち着いた紺の下着にはたっぷりと襞がついていて、鴎外はそれを眺めて、ふぅん、とつぶやいた。顔を赤くして、手を掴んだ佐登が首を振る。まだ、電話は終わりそうにないのだろう。ならば好都合。鴎外は手袋を口に咥えて外すと、佐登の内ももを撫でる。机と鴎外で佐登を挟むように固定し、耳を舌で愛撫する。
「ひ……っ、ふ、ぁ…………っ、」
 電話口の取引相手に聞かれてはならない、と必死で声を我慢しようとする佐登を見ながら、鴎外はくすくすと喉を震わせ、愛撫を続けた。ネクタイを外し、襯衣の釦を片手で器用に外すと、揃いの紺の襞が見えた。ショーツの中に手を潜り込ませると、佐登が体を震わせた。
「ええ、ええ……も、りも……っ、相島社長と、お会いしたく、思って……っ、」
 おります、となんとか声をつなげる。ブラジャーを外し、下から手を添えるようにして揉めば受話器を握っている手が震え、佐登の瞳から涙がこぼれ落ちた。呼吸が荒くなり、秘部がゆるくぬかるんだ。指を意外にもあっさりと受け入れたそこに鴎外はより一層興が乗った。佐登の善いところを指でなぞれば膝がガクガクと震えだして、もう立っているのも無理と言わんばかりに、目の前にあった机に手を着いた。それでも起きていられないのか、腕から力が抜けて、机の上に伏せになる。
「っ、ぁ……っ、は、い……っ、そ、れでは……〜っ、!!」
 電話を切る直前に、鴎外の指に寄って絶頂へ持っていかれた佐登は目を見開いた。なんとか声をだすことだけは唇を噛み締めたこらえた様子だった。いつもよりもずっといい反応をする佐登の手から受話器を持ち上げて、鴎外はそれを電話の上に戻す。
「は……ぁっ、はぁ……んっ、鴎外、さ……っ」
「気持ちよさそうだね? 相手に聞かれちゃうかもって思ったら、興奮した?」
 ぽろぽろと佐登の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「ちが……っ、」
「そう? いつもよりもずっと締め付けてくるから、そうなのかと思ったよ」
 いいながらも指を動かし続けていれば、佐登はあっ、と声を上げた。少し腰を持ち上げて、鴎外は革帯を外し、立ち上がった屹立を佐登の濡れた秘部に擦り付けた。
「……っ、も……鴎外、さん、おね、がい……しま、す……っ、」
「うん、わかってるよ」
 しばらく堪能するように擦り付けていたが、佐登が涙目で鴎外を振り返れば、いつもは冷ややかなその瞳に僅かな熱をともした鴎外が唇を歪めた。腰を掴んで、中に押し込めば、佐登が喉を晒した。
「あっ、ああ――――っ!」
「……はは、すごいね。もう、動くよ」
「ひっ、あっ、あぁっ、んぐっ、あ、っ、ああっ、んぁぁあっ」
 机に伏せた佐登に覆いかぶさって鴎外は律動した。奥をえぐり、抜いては最奥を貫く。その間に何度も佐登が達しているのは鴎外にも伝わってくる。きゅうきゅう、と屹立を締め上げてくる佐登の膣の感触に、僅かに眉を寄せて、小さく熱のこもった息を吐き出した。
「んぁ、あっ、ああっ、ひ、あ、い、くっ、も、いく、からぁ……っ、と、め、とめて……っ」
「ふふ、もういってるの間違いだと思うけど。でも、いいよ、私も限界だから」
 一緒に、ね。
 耳元でそうささやくと、佐登が嬉しそうに鴎外を見上げた。その唇を塞ぎながら、激しく律動を繰り返して、ひたすらに快楽を貪った。最後に思い切り奥に打ち付ければ、佐登が声にならない嬌声をあげ、きつくそれを締め付け、鴎外は薄いゴムの中に欲を吐き出した。

「……鴎外さん、なにか言うことはありますか」
「ええ、っと。電話何だったかな?」
「…………」
「ご、ごめんね!? いや、違うの、ちょっといたずらしたいなぁ、とかそんな、そんな気持ちだったの!」
 冷たい視線が突き刺さる。
 佐登の衣服を整えて上げながら、鴎外はその視線から逃れるように目をそらした。
「……今日の仕事が終わるまで話しかけないでくださいまし、首領」
「え、え、えええ……」
 伸ばそうとした手はぴしゃりと、佐登によって払い除けた。