砕け散った恋は何処へ行くのだろうか。


「ごめん。俺は君の気持ちに応えられない」


放課後。一日中開放されっぱなしの屋上。
昼休みこそ昼食をとるために生徒はいるが、放課後となればあえてこんな場所に来ない。

そんなわざわざ来るのは、告白に来た者と、受ける者と、わたしくらい。

帰宅部のわたしはすぐに家に帰ってもいいが、大してすることもないので、屋上でただただ風に当たっている。

こうやって目的もなく雨でさえなければここで過ごしていると、ほぼ毎日告白現場に出くわしてしまう。
毎回、告白現場を目撃する度に「しまった」と思う。
過ごす場所を変えてしまえばそれでお終い。
だが、教室にいたって、告白の現場になるし、おしゃべりしている子や勉強している子がいて、一人でいるのはなんとなく気まずいのだ。


しかし、どうしたものか。
わたしは告白現場の死角でしゃがみこんでいる。
どっか出入り口から離れたところで告白すればいいものを、扉の前でやってるもんだから帰るに帰れない。


「そうですか……」


女の子は震えた声で、重い金属の扉を開けて出ていった。
玉砕。まぁ、そうだよね。結果が目に見えていながらも、告白していく勇気は素晴らしいと思う。


「やぁ、また盗み聴きかい?」
『幸村』


柔らかい表情の彼が覗き込む。

幸村精市。テニス部部長。
実力もあれば、顔もいい。確か頭も良かったはず。


よいしょと、幸村は私の隣に座る。


「毎日こんな所にいて飽きない?」
『うん。部活は?』
「コート整備。暇なら部活にでも入りなよ」


やなこった。


『幸村は恋愛とか興味ないの?』
「唐突だね」


もう何度も何度も幸村が告白されている現場を見てきた。
先輩だろうと、可愛い子だろうと、全ての女の子のタイプを網羅したんじゃないかと思うぐらいたくさんの女の子が彼の一言で散っていった。


「あるよ。年相応にね」


そう言って幸村は照れ臭そうに笑った。
一応中学生やってるんだ。興味ないけど。


「姓付き合ってよ」
『どこに』
「……言い方変えようか。俺の彼女になって」
『は?』


藪から棒に何言ってんだ。

今わたしはとんでもなく間抜け面だろう。
そんなことどうでもよくて、幸村の方を見れば、あまりにも真っ直ぐな瞳でわたしを見ていた。


「好き。それだけ」


返事はいつでもいいからね。そう言って幸村は立ち上がり、屋上を後にした。


突風が心地よかった。
ああ、わたしは今顔が赤いんだ。