景と蓮はアルバムを残して部屋を去った。
今は幸村と二人きり。
四人でいた時はなんとも思わなかったけど、二人になった途端昼間のことを思い出して、ちょっと気まずくなる。

今ならいいタイミングかな。言えるかな。


「あのさ、」
『あのね、』


二人に一緒に声が出た。わたしは幸村に譲った。


「あの時、何でキスしてくれたの?」


やっぱりその質問だよね。

わたしは幸村と目を合わさず、あーだのうーだの唸る。
横目で幸村を見れば、じっとわたしを見つめている。
腹をくくろう。


『好き、だから。その、告白される前から』


緊張しすぎるとこんなにも声が出ないものか。
肺から空気が抜けて、胸も喉もぺたんこで窮屈だ。激しい鼓動が耳を叩く。
何を見ればいいかわからないと目もまばたきする度に景色が変わる。

ちらりと映った幸村。
両手で顔を多い、丸く縮こまっている。


とても長い沈黙。でも、5分も経っていない
幸村は顔を上げて大きく息を吸う。


「じゃあ、ずっと前から両想いだったんだ」


これでもかと紅潮させ、にやけるのを堪えているのか、唇に力を入れて、幸せを噛みしめているみたいだった。


『多分……。告白されてからも、怖かったんだ』


わたしはポツリポツリと思っていたことを幸村に伝えた。
たどたどしく紡ぐ言葉を幸村は聞き逃さないようにしている。


『ごめんね。どうしたらいいかわからなくて冷たいフリをして』
「いいんだよ、結果的に両想いだったんだから」


わたしの左手を取り、薬指にキスをした。
しっとりとほんのり温かい幸村の唇。
びっくりして体が強張る。

その腕をぐいっと引っ張り、わたしは幸村の胸に飛び込む。
絞め殺されるかと思うぐらいの力で抱きしめられて、幸村の胸の中で窒息しそう。

とくとくと幸村の鼓動が聞こえる。
告白された後に抱きしめられたあの時の鼓動と同じ速さ。

胸から顔を上げると、幸村と至近距離で目が合う。
頬に添えられた手が少し冷たくて気持ちいい。


「ねぇ、キスしていい?」


幸村の親指がわたしの唇を撫でる。


『ダメ』
「どうして?」
『まだ早いから、かな?』


わたしの唇を触っていた親指を、自分の唇に運び、わざとらしくチュッと音を立てる。
顔がカッと赤くなったのがわかる。


「そっか。待っててあげる。でも、近いうちにね?」


意地悪く笑う幸村。


「でも、その前に精市って呼んでほしいな」
『……精市』


わたしは彼の胸に顔を埋めた。