精市と付き合ってから二週間経ったけど、特にこれといった問題はなかった。
それと一緒に進展もなかった。

来週は中間テストか。早いなぁ。


「名、デートしよう」
『テスト前だよ?』
「だからお家デート的な」


初デートがお家デートか。悪くないかな?
放課後デートでもいいんだけど、精市が部活だったからなぁ。
わたしの家が遠いからあんまりゆっくりもできないし、精市が心配して家まで送るとか言っちゃうし。


『じゃあ、土曜に家に来る?部活ないでしょ?』
「えっ?名の家に?」
『うん。誰もいないし、お庭見て欲しいし』


何気なく誘ってしまった。
部屋の片付けたと庭の手入れをしなきゃなぁ。


『お昼からでいいかな?』
「うん、わかった」


俺の家に誘うつもりが名の家に呼ばれてしまった。
女の子の家に、誰も家に居ない日に呼ばれてしまった。

初デートだから約束のキスだけはできるけど、それで止められるかな。
最低だなって思うけど、どうしたってそういう方向に運んでしまう。そういうお年頃って厄介だ。
付き合えてから日に日にそういう気持ちが大きくなっていく。

キスの時みたいに約束してしまうのだろうか。
エッチはいついつまでお預けねって。


土曜日。あっという間に来てしまった。

駅まで迎えに行くよと言ってくれたから、30分も早く名の最寄駅に着いてしまった。
ほんの少しおしゃれをして、カバンに今回のテスト範囲のプリントやノートを押し込んでる。


『精市!』


小花柄のワンピースに身を包んで息を切らせて駆けてくる名の姿。
初めての私服だ。


「早いね。待ち合わせまでまだじゃないか」
『精市の最寄から急行の時間を逆算したら、約束の時間より前に来るのが30分前しかなかったから』


正解。この次は約束の時間の5分後。
名を待たせたくなかったから早く来たけど、彼女は俺の上手を行くみたい。


「結構学校まで遠いんだね。びっくりしたよ」
『一時間ちょっとあるからね。でも、そこそこ空いてる時間に電車に乗るから座って行けるよ』


名は自然に俺の手を取って歩き出す。
最近は手を繋ぐことに抵抗がなくなったんだなぁ。
最初に手を繋いだときは付き合ってないから振り解こうとされたし、俺から手を伸ばさないと取ってくれなかったのに。


「名の私服姿かわいいね」
『服がかわいいんだよ。精市もよく似合ってる。知らない人かと思うくらいかっこいいよ』
「知らない人にときめいちゃうの?」
『私服の精市にも惚れただけです!制服の精市もユニフォームの精市も好きだよ』


計算なのか無意識なのか、本当に俺が喜ぶ言葉を選ぶ。
手を繋ぐことに心拍が上がらなくなってきたところなのに、ふいにかっこいいだとか、好きだとか言うんだから、ドキドキが収まることなんてない。

こんなので二人きりで過ごせるものなのだろうか。