ふむ。どうするべきか。


幸村に告白され早一週間。
あの幸村が告白したという噂だけが学校中いや、立海大付属の敷地内全部に広まっていた。
幸いなことに相手に関してはわたしだという話はない。

すれ違うことはあれど、幸村から話しかけられることもなかった。


今日も今日とて放課後に屋上へ向かう。


屋上の扉に手をかけている幸村の姿を見かけた。
幸村に好きな人がいるとわかっていながらも告白するもの好きもいるものだ。

気付かれる前に階段を引き返そう。


「今日は来ないのかい?」


微笑んだ幸村に声をかけられた。


『告白なんでしょ』
「返事待ちなんだけどなぁ」


幸村はドアノブから手を下ろし階段を降りてきた。

わたしより二段高い場所から見下ろす。
見下ろすと言うより見下されているかもしれない。
わたしは下から睨みつけるけれど、彼には全く意味はない。


廊下からきゃいきゃい騒ぐ女子の声が近付いてきた。

正直見られたところでどうってことないけど、幸村が告白した噂が立ってる以上、彼女らがこの現場を見たときに見つめ合ってるなんて勘違いされては困る。
テニス部のファンクラブは学内の敵に回してはいけない集団だ。

わたしは幸村を横切って屋上へ走った。
多分幸村はわたしを追って屋上へ来るはず。話があるなら。


少し錆びて軋んだドアを開ければ、突風が髪とスカートを引き連れて校舎に押し戻そうとする。
押し戸なら私の力では風圧で開けることなんて不可能だ。

ツカツカとベンチへ向かう。
後ろからキギギと重い音がもう一つ。


「今日もここは風が強いね」


幸村もベンチに向かい、わたしの隣に腰を下ろした。


「返事、今くれるのかな?」


彼はわたしの手を握った。
セクハラ?わからない。逃げられないようにかも。

幸村は真っ直ぐな目で見つめてくる。風に流れる藍色の髪が時折その目を隠して。


『……好きです』


彼女は目を合わせず、横目で扉を伺った。


「わっ、告白じゃん」
「幸村先輩って好きな人いるのに超無謀。ウケる」


さっき廊下で聞こえてきた女の子たちだろうか。
俺はその2人に顔を向けると、慌てて逃げていった。


『手、離してもらっていい?』
「ダメ。応えて」
『いつでもいいって言ったじゃん』
「逃げるでしょ。毎日追いかけていい?」
『部活しなよ』


姓はため息を一つ。

俺はその隙に彼女を胸に寄せた。


「遊びと思ってるでしょ。こんなにドキドキしてるのわかる?」


苦しいくらい心臓が動いてる。また入院しちゃうんじゃないかな。


姓は黙ったままだ。

残念だけど、もう部活の時間だ。
名残惜しいけれど、彼女を離して屋上を後にした。


『バカ……』