精市が名に告白したことはテニス部にはすぐ伝わった。
告白してからの彼はかなり調子が良く、今日は赤也が犠牲になっている。
名とは三年間クラスが同じであり、実はそれ以前より彼女を知っている。
小学生の頃、転校する前は同じ学校だった。
聞けば、今もそこに住み、電車でわざわざ神奈川の立海に通学しているという。
「調子がいいな。精市」
「姓のおかげかな。すっきりしてる」
「応えはまだなのか?」
「うん。でも手応えはある。拒否はされないんだ」
精市はタオルで汗を拭きながら、休憩に俺のそばにやってきた。
まぁ、そうだろうな。
あいつは精市のことが好きだ。まぁ、一年前のデータだが。
恋愛自体に興味はないなどと言っていたが、彼女共に俺たちは受験生だ。恋愛は二の次。
内部進学なら軽いテストでいいのだが、彼女は外部を受けると言っていた。
特待を取って学費を浮かせたいと。
『立海では蓮がいる限りちょっと厳しいんだよね』
いつの日か困ったように笑いながら言っていた。
蓮。二人だけの時に名は俺のことをそう呼ぶ。
学校では生徒会の手伝いをしてもらっている時くらいだ。
親しい仲だと知れば精市は何と思うのだろうか。
「あの子がどう思ってるかデータにないかい?」
ないこともない。
妙に幸村にツンツンしている。多分それが証拠。
興味がないと突っぱねて、恥ずかしさを隠している。
「精市が彼女をどう思ってるかを引き換えならな」
「タダとはいかないか」
次は俺の番だ。ラケットを持ってコートへ向かう。
「彼女は外部受験するらしいから、ほどほどにな」
中学三年の桜の散る頃。まだ3月の卒業まではまだ時間はある。
しかし、あっという間だ。
受験先は神奈川とは限らない。自宅のある東京かもしれない。
せいぜい頑張れ。