予定よりも一日早く帰宅した幸村一家と共に食事をした後、二人してラグに正座をして、勝手に妹ちゃんの服を着たことについて怒られていた。
タグがないと思えば妹ちゃんのお手製の洋服らしく、サイズを間違えてしまったものらしい。
「あら、名ちゃんが手を揃えてると猫ちゃんみたいね〜」
「んんっ」
「お兄ちゃん、名ちゃんを見て萌えないでよ」
ソファで腕を組み踏ん反り返る妹ちゃんは大層ご立腹のようす。
『汚しちゃってごめんね』
「気にしないで、着られない服だから!問題はなんとも思わず着たことと、邪な気持ちで着せたことだから」
「着られずにいる服が可哀想だろ」
「何でお兄ちゃんが偉そうなの!?」
兄妹喧嘩に発展しそうなところを止めに入れば、おばさまがお茶にしましょうと声をかけた。
わたしが昼間に作っていたチョコレートタルト。
瞬時に妹ちゃんは笑顔になり、食卓に座った。
「俺の……」
『また作ってあげるよ』
張り切り過ぎて、ワンホール作ってしまったから幸村一家が帰ってきてよかった。
「寝るよ〜」
『はーい』
「ちょっと待って、何で二人で寝ようとしてるの」
タルトを食べ終え、おばさまと妹ちゃんとおしゃべりしていると、お風呂から出たせーちゃんに呼ばれ立ち上がる。
さっきから妹ちゃんに止められてばかりだ。
「もしかして、昨日の夜も一緒に寝たの?」
『そうだよ?』
「もうこのお兄ちゃん嫌だ」
呆れて頭を抱えてしまった妹ちゃん。
おばさまと妹ちゃんにおやすみと声をかけてせーちゃんのもとに駆け寄る。
おじさまは運転に疲れてもうとっくに眠ってしまった。
せーちゃん部屋に入り、雫の落ちる髪を拭いてあげる。
「明日は部活ないから、名と一日中ゴロゴロするつもりだったのに」
『もう夏休みも終わりだもんね』
「今年も部活三昧だったな」
ため息を吐きながらベッドに倒れこんだせーちゃん。
わたしは彼の隣に座り、まだ湿っている頭を撫でた。
私立高校だからか、夏休みはひと月もない。
その短い期間に大会も詰め込まれて、遊びに行く暇もない。
休みがあるなら心置きなく身体を休めたいようだ。
春にはU-17の合宿に呼ばれていて、この秋にはその大会でアメリカへ行ってしまう。
「名に会えなくなる」
わたしの腰に手を回し、お腹に顔を埋める。
『応援に行ける距離じゃないからね』
「名のご飯が食べたくなったらどうしよう」
『たった2週間じゃない』
「2週間もあれば禁断症状は出る!」
あれ?こんなにせーちゃんってワガママな人だっけ?
より強く抱き着かれて、お腹が苦しい。自分の腕力考えて欲しい。
『せーちゃ、中身出る』
「あぁ、ごめん」
緩んだ腕を外して、わたしはせーちゃんの隣に寝転ぶ。
『帰ってきたらたくさん食べさせてあげる』
「本当?」
『結果が良かったらケーキも焼いてやろう』
「ふふ、頑張るよ」
自らせーちゃんの胸に擦り寄り、目を伏せる。
あっ、と小さく声を上げた彼を見上げる。
「さっきは邪魔されたからね」
甘く柔らかな唇が触れ合った。
さもそれらが一つであることが当たり前のように長いくちづけ。
与えられる愛に胸から愛しさが溢れる。
鼓動がうるさく苦しい。
それはせーちゃんも同じのようで、胸に添えた手が早い鼓動を教えてくれた。
「名俺の恋人に、いや、永遠の愛を誓わせてほしい」
『わたしも誓うよ。ずっと愛しい存在でいてください』