『うわー、幸村のベッド大きい』


ホテルのベッドよりも大きくて、クイーンサイズってやつ?
幸村が大の字に寝転がっても手脚出ないよ、すごい。

不意に脇の下に背後から腕をいれられ、体に浮遊感。
着地した時に弾む感触と、視界に天井と放り出されたわたしの足。幸村の楽しげな笑い声。


『びっくりしたなぁ!もう!』


二人して背中からベッドに飛び込んだみたいだ。

洗濯物を干して、お米をといで、歯磨きをしたらあっという間に23時過ぎ。
幸村の寝ようと提案で、彼の部屋に来たのだけど。


『わたしも一緒に寝るの?』
「うん。広いから二人で寝ても落ちないでしょ?」
『まぁ、そうだけど』


普通客間を貸すのでは?
こうやって二人並んで寝転がるのは小学生ぶりだ。


「真っ暗でぬいぐるみ無しに眠れるようになった?」
『う、ん。ぬいぐるみは無くても大丈夫』
「真っ暗はまだダメなんだ」


クスクスと幸村は笑って、サイドテーブルのリモコンで赤のなつめ電球に切り替えた。


『おやすみ』
「おやすみ」


名はタオルケットに包まり、ころころと頻りに寝返りを打つ。
環境が落ち着かないのか、枕が合わないのか。
まぶたを伏せて、眉間に少ししわを寄せて、タオルケットを胸に寄せる。

やっぱりぬいぐるみが無いと眠れないんじゃないか。


「名」


身体を引き寄せ、真正面から抱きしめる。
もぞもぞと身をよじった後、俺に背を向けて、前に回った腕を胸に抱えるように寄せてすやすやと寝息を立てた。

安心するとすぐ寝ちゃうね。昔のままだ。


しかし、おいしいけど、まずいな。

名の胸が腕に当たってる。
同じシャンプーを使ったはずなのに、別の匂いがする髪。
俺の胸とぴったりとくっついた名の背中から伝わる体温。
眠れるかな、俺。


名が寝入ったのを確認してから照明を完全に落とした。
カーテンの隙間から月明かりや街灯の光が差し込む。
そんな光に照らされた名はどんなに美しいのだろうか。


「襲われたって知らないからね」


自分の理性と名の無防備さに叱咤する。
据え膳なんて言うけど、目の前の欲に負けたことを正当化しただけじゃないか。俺はそんな奴じゃない。
信じてるから、俺は俺を。


俺もまぶたを伏せ、深呼吸をして眠りについた。


『せ……ちゃん』


やっぱり眠れないかも。