ハッ!アラームセットするの忘れてた。
夢の中で思い出してて目を開けば、6時すぎだった。
素晴らしいね、わたしの身体は。


頬にあたる幸村の寝息でその近さに驚き、寝てる間にお互いが引き寄せあって眠っていたらしい。
わたしの体にだらりと乗せられた幸村の腕をくぐって、ベッドを下りる。


メイド服に着替え、猫耳は控えさせてもらってバンダナを頭に巻く。
自宅ならばこんなことしないけど、万が一のためだ。料理に髪の毛が入ったらそれだけで手をつけられないからね。


昨日仕込んでおいた唐揚げや、昔と変わらなければ幸村の好きな甘めの卵焼き、ほうれん草のおひたしに、ひじきの煮物。
夏だから保冷はしててもプチトマトは入れられない。
鯖の塩焼きを詰めていれば、もうすぐ7時だった。


バンダナを外して、猫耳をセット。律儀だね。


『幸村〜、朝だよー。ゆーきーむーらー』


四つん這いになり、ベッドの真ん中に転がる幸村の肩を揺らす。
んー、と力のない声を出して、薄眼を開ける。
しぱしぱと瞬きをしたあと、勢いよく身体を起こした。


「おはよう!」
『おはよう!焦んなくても時間は余裕あるよ』


わたしはベッドから下りて、キッチンへ向かう。


『目玉焼きは半熟でよかったよね?』
「うん。お願い」


身なりを整えた幸村は麦わら帽子を被ってサンルームから花壇へ向かった。
ついでに洗濯物も取り込んでおいてください。


「わー、すごいね。朝から豪華だ」


目玉焼きとお弁当の残りのおひたしや焼き鯖を頬張る幸村。
朝からよく食べる。良い事だ。


「あの唐揚げは?」
『わたしのお昼ゴハンになる予定』


熱々ご飯を丼に入れて、千切りキャベツの上に甘酢で和えた唐揚げを乗せて、マヨネーズをかけて食べるのです!
最高のやる気のないメシ。幸村はいいなーと一言。
今日はお弁当の唐揚げで我慢してください。


「いいお嫁さんだ」
『幸村もいい旦那さんになりそうだね』
「そう思うかい?」


ご飯は褒めてくれるし、洗濯物は取り込んでくれたし、愛しいものへの愛は人一倍注ぐ。
幸村と結婚できる人が羨ましいよ。
優しい目を向けられるけど、猫耳つけた女を嫁にしたいとは思わんだろ。


「じゃ、行ってくるね」
『お家のことは任せて!いってらっしゃい』
「ふふ、いってきます」


幸村の背中に手を振る。


晩御飯はどうしようかな。ハンバーグ、ハンバーグがいいかな。
掃除をして、洗濯物を畳んで、時間もあまりそうだし、お菓子でも作ろうかな。

主婦の皆さんは、家事の合間をどうやって過ごしているんだろう。