『ありゃりゃ、学校でゲームしちゃダメだよ』
「わーーーー!!」
草陰に隠れてポータブルゲームをひろげていると、後ろから頭を掴まれた。
真田副部長じゃなくてよかったー!
振り向けば女子が立っていた。
にこにこしている感じが幸村部長を彷彿とさせたけど、怖い雰囲気は全くない。
でも、どこかで見たことがあるような人。
『放課後だから見逃してあげる』
よかった!優しい人だ!ほっと胸を撫で下ろした。
女子は俺の隣に座って画面を覗き込む。
『あ、そこには隠しマップあるよ』
「マジ!?」
このゲームをしたことあるのか、ちょっとしたヒントをくれた。
そうなんだよ、このゲーム隠しマップが多すぎてアイテムコンプできなくて詰んでたんだよな。
『あと右に二歩で』
「おい、そこで何をしている」
『ほぎゃーー!しゃにゃにゃくん!やにゃぎくん!』
「舌が回ってないぞ」
探してたアイテムが見つかった矢先、女子の後ろから声をかけた真田副部長と柳先輩に肩を震わせた。
女子は驚いて滑舌が悪くなっていて、何一つ言えていない。思わず笑いそうになるのを唇を噛んで堪える。
「赤也、お前はまたゲームを」
『わたしが注意したから、ね?』
「む、しかし」
『あ、そうだ。完全更衣終わったでしょ?』
怒られる!と思ったけど、女子が宥めてくれて副部長の雷は落ちなかった。
その上、話題を逸らし、副部長と少し離れたところで話し始めた。
というか、真田副部長とタメで話してるから先輩なのか?何にせよ感謝感謝。
「フッ、姓に助けられたな」
「ッス。あの人副部長が怖くないんスね」
柳先輩は呆れたと言わんばかりに大きくため息を吐いた。
なんかマズイこと言ったかな。
「彼女は生徒会長だぞ。弦一郎が怖くて務まるか」
「えぇ?!生徒会長って、もっと格好いい人じゃなかったっけ」
女子なのは知っていたし、壇上の姿を遠目に見たことはあるけど、胸を張って、幸村部長とも負けないくらいの静かな威圧感を持った人だったはず。
手塚さんとか跡部さんと並んでも霞むことはない気がする。
今、俺と会った、優しくて、びっくりするとふにゃふにゃの喋り方になる人とは別人なんだけど。
でも、同じ生徒会の柳先輩がそういうのならそうなんだろう。
「人の前に立たない姓はふにゃふにゃだ」
「へぇ」
それから俺は姓会長にゲームの攻略を聞きに行くようになった。
先輩も行事の準備でそれなりに忙しいらしく、放課後も遅くまで残っているため、帰り道でこっそり教えてくれる。
副会長もいてなんとか生徒会は回していけるけど、柳先輩が一時的に部活優先になっているのでかなり大変らしい。
部活優先も会長の計らいらしく、自分の首を絞めていると柳先輩は言っていた。
「疲れないんスか?」
『疲れるよ〜。でも、任されたからにはちゃんとやるの。それに、癒しもあるしね』
カラオケに入って、週に一回だけのゲーム会。
長椅子に隣同士で座り、ハンターゲームを取り出す。
気まぐれに丸井先輩とジャッカル先輩も混ざってくれて、クエストも素材集めも簡単。何より会長が強いのだ。
「癒しって?」
『恋愛シミュレーションゲームです』
「えぇ……」
『引かれた……』
ゲーム全般をやるらしいが、恋愛系が好きらしい。アクション性のないゲームってゲームなのかよ。
『一人攻略できないのよね』
「男心がわかってないんスね」
『生意気だにゃ〜』
「あぁ!回復投げてくださいよぉ〜」
『ヤでーす』
この後しばらくして会長のあんまりよくない噂を耳にした。男を取っ替え引っ替えしてるって話。○○くんに告白した。××くんに振られたとか色々。
だけど俺は全く気にしなかった。
だって全員名さんが今やってるゲームのキャラクターなんだから。