正直、この状況はヤバイと思う。

彼女である名が、四つん這いで、手は俺の脚の間に揃えて、ジッと俺の顔を見ている。
キラキラとした彼女の目に俺の焦った顔が写っているし、何よりここはベッドの上なのだ。
生唾を飲んでしまうのも無理もない。俺だって健全な男子中学生なんだし。


「名?」


動揺して声が震えて情けない。

なんでこうなったかって、蓮二から面白いことになるから名に飲ませてみろと渡されたジュースが問題だ。
あれに絶対変な物が入っていた。
そうじゃないと名がこんなに積極的に俺に迫るはずがない。


さらに近付いた顔に思わず背ける。
すると、チュッと軽い音を立てて頬に唇が触れた。一度だけでは無く何度も。
時折、舌が這う。


「ま、待って!」


肩を押して身体を離す。キョトンと首を傾げる。かわいい。じゃなくてさ。
俺は名に同じことをするけど、こんな羞恥に襲われるんだ。
知らなかった。仕返しに何度もしてやろう。


「名どうしたの」
『にゃー』
「にゃ、にゃー?」


俺の胸に顔を寄せて、ぐりぐりと押し付ける。
ああ、本当だ猫だ。
頭を撫でれば目を細めて気持ち良さそうにしている。

耳と尻尾も生えてればいいのに。生えてなかったからびっくりしたんだけど。


脚の間に座って、ウトウトし始めた名と一緒にベッドに倒れこむ。
あー、俺も眠くなってきちゃった。


『せーいち』
「ん?名」


名に起こされたときにはもう夕方だった。
寝惚け眼まま名に手を伸ばして頭を撫でる。
またきゅっと目を細める。まだ猫のままなのかな。


『なんか猫になった夢を見てたんだよね』
「うん」
『せーいちの顔舐めたり、頭突きしたりさ〜』
「うん。さっきしてたよ」
『え?』
「さっきしてたよ。自分から」


夢だと思っていたことが現実だったことに、名の顔が次第に赤くなっていく。


「可愛かったよ。あんなに積極的になるなんて」


両手で頬を覆い、目を白黒させる。


『せーいちも夢を見てたんだよ!』


ぷいと顔を背けて不機嫌になってしまった。


「幸せな夢だったなぁ」


ため息とともにそう呟けば背中を強く叩かれた。猫パンチかな。痛くないな。

また蓮二から貰おうかな。
もっと改良されて耳と尻尾が生えるようになったりしてね。