「姓さんは脚綺麗だし、ミニスカートじゃないとダメよね!」
『えっ、えぇ……』
文化祭委員の不吉な一言。
中学最後の学園祭。ベタなくらいにコスプレ喫茶をやろうと満場一致で可決した。
それもそのはず、わたしのクラスには幸村精市が在籍しているのだから、彼のコスプレ見たさに女子が手をあげるだけで多数決で決まったようなものだ。
その人気者の幸村精市は何故かわたしの彼氏である。
夏休み明けの彼の復帰直後の日だった。
突然、ホームルームが終わっていざ解散となった教室で、唐突に教壇に立ち告白したのだ。
女子の悲鳴と男子の囃し立てる声に包まれる中、到底断ることもできず、付き合うことになったのだ。
まぁ、誰かと幸村が付き合いだしたくらいで彼の人気は落ち着くこともなく、寧ろわたしよりもいい女アピールが激しくなったと思う。
その中に、独占欲剥き出しで飛び込んだりなんかしない。
「それともセーラー服とか、ナース服の方がいいかな」
パラパラとカタログの、バライティーグッズのコスプレページを見せてくれる。
全体的に本職の人は絶対着ないデザイン。
ある程度値段が高いし、当番ではない子と共用で着るから文句は言えないんだけど、あえて着たいものはない。
「名にはどれも着て欲しくないかなぁ」
「あ、幸村くん」
わたしの肩を抱いてカタログを覗き込んできた幸村。
彼の柔らかな髪が頬に触れてくすぐったい。
『わたしもどれも微妙かな』
「でも、着てくれなきゃ困るし。幸村くんは何着るんだっけ」
「燕尾服だよ」
「じゃあ、やっぱり姓さんはメイド服だね」
決まりと、カタログを閉じてどこかへ行ってしまった文化祭委員。
公開処刑みたいなものだよ、それ。
「俺、ああいう男の視線を集めるだけのコスプレって嫌いなんだよな」
『わかる。どうせなら正統派なものを着たいよね』
いかにも若気の至りって感じのコスプレは嫌いだ。
その職に就かないと着れないからこそ、こうやってコスプレになっちゃうのはわかるんだけどさ。
「でも、主人に逆らえないメイドさんを食べるのはありかなって」
『ゆ、幸村!?』
「男の視線を集めちゃう淫らなメイドさんにはお仕置きかな?」
肩にあった手が次第に腰に降りてきて、彼はくすくすと笑うばかり。
なんという爆弾発言なんだ。
わたしは顔が赤くなるのを感じたし、会話の聞こえた周りの女の子たちも頬を染めている。
『き、着てもないのにそんなこと!』
「名が脚が綺麗なのはみんな知ってるんだよ?みんな見ちゃうに決まってるじゃないか」
ね?と口は弧を描いているが、目は全く笑っていない。
付き合っているうちに気付いた見え隠れする独占欲。
なんとかせねば。
今更、コスプレ喫茶はやめようなんて言えるはずがないし、他のがいい!って言うにも他にコレといったものもない。
『た、タイツ履くから!』
「……譲歩してあげる」
不機嫌そうに身体を離してくれた。
ほっと胸を撫で下ろす。
『お仕置きなんて言うから、びっくりしちゃったよ』
「本気なんだけど」
『えっ!?』
不機嫌は治っていないのか、いつもよりも低いトーンで返され、背筋がぞわりとした。
「終わったら、覚悟しててね」
彼はわたしの頬に口付けをして、ニコッ笑う。
女の子からの悲鳴と、唐突な出来事に目を回す。
幸村の不機嫌は治ったみたいだけど、わたしは深いため息を吐く。
覚悟ってなんだよ……。
ちょっと憂鬱な文化祭準備が始まった。