「よっしゃ!姓、幸村部長に告白してこい!」
『は?意味わかんないんですけど!』


放課後の2年D組。
わたしと赤也と柳先輩だけがいて、周りの教室も廊下も人の気配がない。


なんでこうなったかと言えば、中間テストの合計点が低いほうは罰ゲームというくだらない賭けを赤也としていた。
わたしが赤也に5点及ばず、冒頭の命令を下されたのだ。

赤也は罰ゲームのこともあり、今回は相当頑張ったという。
合計点が120点にも及ばないくせに、200点なんて取っている。
この底辺すぎる戦いに柳先輩は呆れていた。


「行ってこい、姓。精市は屋上の花壇にでもいるだろう」
『や、柳先輩まで』
「罰ゲームをこなしてもらわないと赤也が気になって集中しないのでな」


そう言って意地悪に笑い、猫を摘まみ出すかの如く廊下に放り出された。


「玉砕してこいよ〜」


ニヤニヤと手を振る赤也を睨みつけて屋上へ向かった。


告白するのが、なんでよりにもよって幸村先輩なんだ。
かっこよくて、テニスも出来る、立海中みんなの憧れ幸村精市先輩。
モテモテだから、告白しても真に受けてくれないだけマシなんだろうけど、好意を持っていないとはいえフラれるんだから多少傷付くぞ。
わたしだって、恋はしてないけど乙女なんだから。それなりに。

というか、見ず知らずの女生徒に告白されて迷惑だろうな〜。
ちゃんと告白したあと、赤也との罰ゲームって言ってシメてもらおう。


重い足取りで、屋上の扉を開ける。
柳先輩が言っていたように、幸村先輩は花壇に水を撒いていた。


『ゆ、幸村先輩』


柄にもなく緊張するな。
告白するのは初めてだ。好きでもない相手とはいえ、ドキドキするものだな。


くるりと振り向いた先輩がにこりと微笑む。


「君は赤也の補習友達だね?」
『ふ、不名誉!』
「蓮二も手を焼いてるよ。それで、どうかしたかい?」


水を撒く手を止めた幸村先輩に近付く。


『す、好きです』


きちんと目を見て言い放った。
あー、緊張した。ミッションクリア。
手汗も息も苦しい。

大きく息を吐いて幸村先輩を見れば顔を真っ赤にさせていて、わたしもなんだか顔が熱くなった。


なんで?なんで?こういうの慣れてるんじゃないの?


「嬉しいな、君からそんなことを言ってもらえるなんて」
『え、え?』


幸村先輩が一歩わたしに近付いたから、一歩後ずさる。

どこまでが罰ゲームなんだ、赤也。
実は幸村先輩にまで手を回していて、わたしをイジメてるのか?


逃がさないよ手首を掴まれ、引き寄せられる。
幸村先輩に身体がぶつかる前に踏みとどまる。


「ふふ、名。俺も好き」


罰ゲームです。なんてとても言えない雰囲気!どうしよう。


「俺を好きになるよ、名」


あれ?
幸村先輩、好きになるって。


『もしかして、赤也に』
「そう。協力してもらったよ」
『えええ!?』


ギュッと抱きしめられて、爆発しそうなくらいに心臓が激しく音を立てる。

幸村先輩確信犯だったんだ!


「俺が告白してフラれるなんてヘマしたくないからね」


クスクスと耳の近くで笑う声が聞こえる。


赤也め!幸村先輩め!柳先輩め!絶対許さない!


「ゆっくり恋人になろうね」


もうなるようになれ!