立海大付属高等学校テニス部。俺が4月から所属し、見慣れた面々と共に一年生として振り出しからのスタートとなる。
そうは言っても中学と同じく、地区大会までにはレギュラーとしてコートに立つのだろうけど。


新入部員だけの整列。見渡せば、別の中学から入ってきた地区大会で見たことのあるような奴もいれば、これからテニス始めますみたいな初心者もいた。

新入部員は男子だけではない。男子硬式テニス部だというのに。
高校から導入されるマネージャー。中学からやりたいと騒いでいた女子たちが10人ほど別で整列していた。


「当然だと思うが、マネージャーは3人もいれば充分だ。体力面を考慮して、これから男子に混ざり練習をし、できる者のみ残れ」


現部長の話に女子は騒ついた。当然か。


「蓮二、どのくらい残りそうかい?」


隣に並ぶ蓮二に小声で話しかける。彼はちらりと女子の顔を見て一人と答えた。
なんだ根性なしばかりじゃないか。仮に蓮二の予想した人数以上残っても、真田が怖いだの、日焼けするだの、休みがないだので抜けていくんだろうな。


一旦ここで話を止め、準備体操に入る。この後の外周の時に走りながら会話をすることにしよう。


「あのパーマのかかった黒髪のあいつが残る」
「ポニーテールの?」


4面もあるコートを20周の外周。俺にとって全くつらい距離ではないのだが、女子たちはどうだろう。男子と共に走り出したというのに、あっという間に差がつく。
だが、その中で一人だけ男子に混ざり、特にペースを崩すことなく、寧ろ男子を追い抜き走る女子の姿。
整列しているときから思っていたけど、一番怠そうにしていた女子だ。


『やぁ。さすが王者立海の元レギュラーだね』


先頭を走る8人に並走を始めた彼女。7周を過ぎたところでも彼女はまだまだ余裕そうだった。
俺たちは彼女に注目する。が、すぐに前を向いて誰も何も言わずにスピードを上げた。犯人は数歩先を走る負けず嫌いの真田だろう。

中学の時の準レギュラーとも差がつき始めても、彼女は無言で俺たちに混ざり完走した。
大粒の汗をかき、座り込むことはせずに、体操をして疲労が残らないようにしていた。元々運動部だったのだろうか。


「アイツすげーな」
「どちらかと言えばマネージャーより選手だな」


丸井とジャッカルもそう思うかい?真田も仁王も彼女を睨んでいた。


息を整えた彼女は俺たちに身体を向けた。誰かに似ている。
まだ外周を終えてない奴らも疎らにいる中、彼女は俺たちに右手を差し出した。


『マネージャーとして残るつもりだから自己紹介しておくよ。切原名。弟が世話になったね』
「赤也の?」


握り返さないのもどうかと思い、俺が代表して握り返す。
小さい手の中にマメがあった。

そういえば赤也が姉もテニスをしていて、どこかの公立で部長をしているとかそんな話をしていたかな。


『みんなの名前はわかるからいいよ。プレイスタイルとかも』


にこりと笑う姿は赤也とそっくりだった。


結局、ふるいにかけられたマネージャーは名しか残らなかった。
3学年の二人と名のみで夏が過ぎ、受験という名目で3年は引退していった。
その時、俺は実力主義と中学のこともあり、部長を引き継いだ。


名はよく働き、よく周りを見ているが大変お気楽だ。
一人になっても、後から誰か入ってくるでしょとか、来年集めればいいってと楽観的に考えていた。


「来たな赤也」
「へへ、当然でしょ」


春になり赤也が高等部に上がってきた。共にマネージャー候補も俺たちが入部した時よりも人数が多い。
正直、この半年名だけでも充分回せて行けたのだが今後を考えるとあと二人ほど入れておくべきだろう。

去年と同様のふるいをかけてみた。三人残ったが、夏を待たずに辞めていった。


『想像と違うよね、マネージャーって』
「いや、姉ちゃんバケモンだから、なんとか出来てるっていうか」
『なんか言った?』


赤也に向かって拳を振り上げる。赤也よりも小さい名が赤也に拳骨が振り下ろされることはない。


中学三年の時のレギュラーに名が混ざった、これが王者立海のテニス部である。