『ちょっと聞いてよ。精市、弦一郎、蓮二』
「何?ちょっと、髪はちゃんと拭きなよ」
『水泳の授業中に泥棒が来ちゃってさ』
「馬鹿者。貴重品は鍵付きのロッカーや見学に預けろと」
『いや、下着なんだよ』
「……は?」


水泳の授業中に起こったことを名は三人に説明した。勿論小声で。

畳んだ制服と共に表に出して棚に置いていた物ばかり盗まれていた。
カバンを漁ってまで盗ることはしなかったから無事な子もいくらかいるし、着替えとして別に持ってきていた子もいるからとりあえずノーブラを回避した子もいる。というか、殆ど回避した。
名はたまたま忘れたがためにノーブラである。

上下共にではなくてブラだけって言うのが最悪だ。
家ではしてないというのに、今してないとなるとものすごい違和感を感じる。
こういうの見て興奮してるんじゃないの。本当最悪。


「名は今してるの?」
『……してないから、部活休ませていただきのですが』
「構わないよ。部活も休みだ。赤也と一緒に帰るんだ」


幸村は自分の着ていたベストを名に着せた。
キャミソールにブラウスだけだった名には非常に助かるもので、不自然な体型も隠せた。


「不届者は成敗してくれよう」
「ああ。明日には土下座させてみせよう」
「土下座で済ませられないかな」


赤也にメッセージを入れておけば、いち早くホームルームを抜け出し、名たちの教室の前で待っていた。


「頼みました、先輩。姉ちゃん送ったら合流するんで」
「もう犯人の検討ついてるんだ」


幸村は目を細めた。赤也は悟る。敵に回した相手が悪かったな、と。


《……校内に不法進入及び窃盗の容疑で現行犯逮捕されました》
「あら、立海でこんなことあったの?怖いわねぇ。名ちゃん大丈夫だった?」
『大丈夫じゃなかった』
「本当いい迷惑だったぜ」


リビングで夕方のニュースに流れる今日の出来事。この時間のニュースになるくらい、すぐに見つかったのか。
犯人の動機より、幸村たちの行動のほうが気になる。

押収された下着の映像に自分の物を見つけるという、なんとも言えない状況に名は目を伏せた。


『みんなありがとう』
「ふふ、同然なことをしたまでだよ」


昨日早く帰った分、お礼にクッキーを焼いた。
幸村には借りたベストも一緒に手渡す。


「洗った?」
『うん』
「別にいいのに」


受け取りすぐに袖を通す。
自分の物なのに他人の匂いがすることに違和感を覚える。名や赤也の家の匂いなのだろう。


『ところでどうやって捕まえたの?』
「蓮二と真田がいれば簡単だよ」
『そうですか』


幸村の良からぬオーラに名は追求しなかった。多分、警察に取り押さえられるより辛い報復を受けたのだと思う。


「よし!昨日部活できなかった分頑張るよ、名」
『はーい』