「会長〜、副会長ってホントに幸村部長のこと好きなんですかね?」
「ふふん、甘いね赤也くん。名はツンデレなのよ」


会長は何ドヤ顔してるんだろう。切原はなんで訝しげにわたしを見ているんだ。


切原は会長と付き合うようになってから生徒会室にやってくるようになった。柳生のように手伝ってくれるといいんだけど。
柳もすっかり呆れてしまってもう何も言わない。


それと生徒会室にやってくる部外者はもう一人。


「名、今日も部活見てくれないのかい?」


生徒会室の入り口で佇む彼、幸村。

見ての通り、校内に取り付けてる目安箱や行事の後のアンケートをまとめてるの。海原祭の後で一般客のものもまとめないとダメなんだから。


『見に行かないよ』
「そう……」


ジッと睨みつければ、やれやれと言わんばかりにため息を吐いて、切原を連れて生徒会室を後にした。
柳はいいの?と声をかければ、あと少しで終わるとのこと。今期の書記は仕事が早いね。


「見てみろ。一番上の雨樋のあたりだ」


柳先輩に言われるがまま、その指定された校舎を見た。視界の隅に副会長の姿が見えた。

こっちを見てるけど俺と視線は合わない。
柳先輩にすぐに視線を戻すように促され、試合をする幸村部長と真田副部長に視線を戻した。


あれ?副会長、さっきは見に行かないって。


「ここにやってこないだけで、姓はああやって精市の姿を見ている」
「えっ、超めんどくさい」
「ツンデレだからな」


柳先輩はそう言って、俺の英語の点を見たときのように笑った。姓先輩馬鹿にされてますよ。


「俺も付き合うまで名があんなに素直じゃないとは思ってなかったよ」


部活が終わり、着替えてる途中に赤也が名ってツンデレなんですかと、突拍子も無いことを聞いてきた。

確かに名は素直ではない。でも、素直じゃないのはお互い様。

名にわざわざ今日は俺が試合をする旨を当日に伝える。しかも、今から部活が始まろうとする放課後に。
するとどうだ。木にも人にも邪魔されないあの資料室から試合を見ているんだ。

近くで応援して欲しいのが本音。でも、時間を割いてああやって観てくれているだけでも嬉しい。

目が合えば引っ込んでしまうから、気付かないフリをしている。まぁ、そのあたり名だって気付いているだろうけど。


今は多分、俺の試合中で止まっていた仕事を進めているんだろうな。わざと帰り支度を遅くして迎えに行く。待たせることが名は嫌いだ。


「あとね、ぴったり近くにいないけど、俺が女子に囲まれてる時はすぐそこで見てたりするよ」


素知らぬふりをしてそこにいる。
そのあと俺が一人になると何気なく近付いてくる。彼女の余裕というか、妬いた猫というか、俺が名にしか興味がないのをわかってるというか。


「可愛いよね」
「えー、俺はめんどくさいッスよ」
「会長は妬かないだろうね。どっちかといえば赤也が妬くほうだもんね」


赤也は図星だったのか、ふいと視線を逸らされた。


素直か捻くれ者どちらが好きかと言われれば素直な方が好きだ。
でも、こればかりは惚れた弱みというか、なんだかんだで俺が好きということを隠さない行動が愛おしい。
物語の中でこんなのが可愛いなんて思わなかったのにね。


「帰るよ、名」
『待って、あとちょっと』


会長はもう赤也のところに向かってしまって、一人生徒会室に残っていた名を迎えに行く。やっぱり終わってなかったね。
慌てて引き出しに資料を仕舞い込んで、差し出した俺の手を握った。

二人だとちょっとだけ素直なんだからハマるよね。