そろそろ19日ですか。
10月に入った時からずっとそわそわしていた。姓さんに告白してから二ヶ月経とうとしている。
彼女に会いたいという気持ちが日を経るごとに増していく。
部活は勿論、高校生ともなると夏休みも僅かで、姓さんに会いに行くための時間を作ることができなかった。
その上、甘味処は夏季と冬季だけの営業らしく、手伝うこともないのか、お彼岸に店を訪ねてもお母様らしき人がカウンターに立っているだけだった。
「辛気臭い顔しとるのぉ、柳生」
「あなたは楽しそうですね、仁王くん」
「プリッ」
妹とは順調なようでなによりです。私は今瀬戸際だと言うのに。
あの時のお返事は好感触だったと思います。告白がいきなりすぎたと失敗にも思いますが。
でも、あの時の姓さん、思わせぶりな態度でも何でもなかったように感じました。
大げさに言ってしまえば、告白を待っていたような、そんな印象を受けました。
『はぁ……』
「辛気臭っ!」
「仕方ないよな、何もできてないんだろ?」
部活帰りのブン太とジャッカルが店に来て大福を頬張っていた。
別に二人を引き止めるつもりはなかったんだけど、柳生くんと共通の友達ということで相談ついでに新作を試食してもらっている。
「気持ち決まってんだろぃ?話は早いじゃん」
『それを10年以上も片思いしてるブン太には言われたくないな』
「はぁ!?」
大福をしこたま口に突っ込んだブン太に殴られそうになったところをジャッカルが仲裁に入る。
ごめん、ありがとう、ジャッカル。5年以上の付き合いでも、相変わらずなんだね。
ブン太からは時々柳生くんの話を聞く。
準レギュラーに上がれたとか、テストで総合2位だったとか、体育祭のトラック競技の1位だったとか、高校生論文大会で優秀賞をもらったとか。
それを聞けば聞くほど、素敵な人だなとも思うし、同じだけ劣等感を抱いた。
そんな彼に好かれたのだから胸を張れとブン太もジャッカルも励ましてくれる。
「見合う見合わないとかは他人の意見で、その程度で揺れてたらそれまでぜよ」
「それを突き通して心中した物語が沢山あるのですが」
「死んでまえ」
なんてことを仰るんでしょうか、仁王くんは。
姓さんはとても素敵な方です。
丸井くんや、桑原くんから聞く限りでは、幼い頃から店を手伝い、和菓子作りに一生懸命。
特別成績が良いわけではないそうですが、人当たりの良さから先生には好かれていたそう。
私も絵に描いたような良い子でしたが、彼女も同じみたいです。
「ところでよ、その19日ってお前ら約束してんの?」
『え?』
「お前さんにしたら行き当たりばったりじゃのぉ」
「連絡先を聞く機会なんて皆無でしたし」
「名も柳生も、普段は用心深いんだけどな。変なこともあるもんだな」
『うう……』
連絡先知らないし、どうしよう。